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[2006年3月31日 読売新聞]

「ポスト小泉」の足元

「ヒルズ族の世界は狭い」

 「皆さんが応援団です」自民党の党改革実行本部事務局長・世耕弘成(43)(参院和歌山選挙区)がそう呼びかけると、約60人の若手起業家たちから大きな拍手が起きた。

 17日夜、東京・麹町で開かれた、インターネット選挙運動の解禁に向けたシンポジウム。世耕は「政治家と政党のホームページは選挙中も更新可能にする。来年の参院選までに実現したい。個人的には電子メールやブログも含めた全面解禁が目標だ」と強調した。

 主催者は、ITベンチャーなど157社の起業家が名を連ねる「YES」だ。発起人代表の堀義人(44)はこう語って力みもない。

「一見、政治に縁遠そうな起業家たちも、政治に対する関心はある。HPやブログで自分の意見を表明しているし、政治家の発言もネットでよく見ている」

 ITは、政治活動の道具としても無視できない産業に成長しつつある。ネット最大手のヤフーは2月から「Yahoo!みんなの政治」という政治情報サイトを始めた。国会議員のプロフィルや重要法案への考え方が検索でき、衆参の約330議員が参加している。

自民党がITベンチャーなど新産業に触手を伸ばすことにしたのは、2004年参院選で民主党に第一党を譲ったのがきっかけだ。当時、党改革実行本部(本部長・安倍晋三幹事長代理)では「既存の業界団体だけでは、集票も、政策要望の吸い上げも不十分だ」という反省の弁も出た。

通産官僚出身の西村康稔(43)(衆院兵庫9区)は、ベンチャー企業に呼びかけ、昨年1〜3月に「タウンミーティング」を4回開催した。

 初回に登場したネット取引大手「楽天」社長の三木谷浩史(41)は、企業合併促進のアイデアを提案した。安倍は「これまで日本は一次産業など特定産業に5割を超える人々が従事し、自民党はそうした人々を支持母体にしてきた。たが、今後は新しい産業の声を聞く必要がある」と秋波を送った。

 西村はベンチャーとの付き合い方をこう語る。

 「彼らは経済界の無党派層。既存の枠にはめようとしたり、急に政治献金を求めたりすると嫌がる。緩やかな関係を築くことだ」

 自民党がこれまでIT産業の中でパイプを築いてきたのは、コンピューターなどを開発・製造するハードウエアーメーカーだ。

 党側の窓口は、情報産業振興議員連盟(164人)69年に田中派で党幹事長を務めた橋本登美三郎を会長に発足した。現在は津島派の防衛長官・額賀福志郎(62)が会長だ。コンピューター開発に補助金を与え、国産コンピューターを導入する企業に低利融資を実施し、国内メーカーを育成してきた。

 議連事務局長の茂木敏充(50)(元IT担当相)は「ヒルズ族の世界なんて狭いもんだ。IT産業全体が百兆円規模の基幹産業として国際競争力を持ち続けられるような戦略を示すのが政治の役割だ」と言う。議連は年末までに、今後5年間で4兆円を投入し、超高速ネットワーク整備などを進める提言をまとめる。

業界団体側の窓口の一つ、電子機器メーカーなど526社・団体が加盟する「電子情報産業協会」(JEITA、会長=東芝会長・岡村正)は昨年12月の税制改革でロビー活動を成功させている。政府税調が廃止方針を示した「IT投資促進税制」について、議連や党税調に働きかけ、規模は縮小したものの、違う名目で存続させた。

JEITA専務理事・金子和夫は説明する。「政策要望をかなえるには、政治家の方にも『これは大事』と思ってもらう雰囲気作りが大切だ。一部の理解者と個人的に付き合うだけでは駄目だ。私たちの活動で恩恵を受けているベンチャー企業も協会に入って活動してほしい」

IT企業出身の参院議員・小林温(41)は昨年暮れ、都内のバーで、経済産業政務官の就任祝いに集まってくれたベンチャー企業家たちとグラスを傾けた。

「政治と付き合うメリットが分からない」と繰り返す若手経営者に、小林は食い下がった。

「政治にアプローチしなかったために、税制や労働問題などで実現していないことが必ずあるはずだ。まとまって意見を言ってくれないと、産業全体を後押しできない。合コンをする時間があるなら、ネットワーク作りに精を出そうよ。」(敬称略)

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