[2002年11月12日 週間東京大学新聞]
東京大学新聞社主催シンポジウム 「選挙と情報」〜情報戦を考える〜
●情報戦の現場で
近年の情報戦は、インターネットなどの新しいツールを生かし、増加する浮動層に対していかに効率的にメッセージを送ることができるかが重要とされる。
自民党の選挙スタイルは過渡期にある。従来の組織型選挙のみではもはや立ち行かない。一方、近年の情報戦は組織がなくても展開することができる。現在は、両者のバランスを模索している段階と言えるだろう。
明確なメッセージが票につながるという原理は今も変わらないが、有権者が求めるメッセージをしることは容易でない。マーケティング的手法の導入はアメリカに比べ大きく遅れている。
●政治体制と情報戦の質
日本では、政党政治が十分に機能しているとは言えない。そのため、選挙における情報戦は候補者が主体であり、政党の果たす役割は多くない。成熟した二大政党制をベースとしたアメリカの有権者マーケティングは、そのままの形では効果が薄いのではないか。
また、特に自民党では候補者決定過程が必ずしもオープンではなく、候補者は政党の政党を体現しにくい。政党というファクターの欠落を補うため、日本では候補者個人の強烈なメッセージが求められる傾向があるが、それが有権者にとって有益な判断材料となり得るかは疑わしい。
●インターネットの利用法
一般的に、マスメディアでの扱いは与党に不利といわれる。今後は、候補者の意見を中立、客観的に比較する公開討論的な場をインターネット上に設けることが可能になるだろう。公職選挙法上難しい面もあるが、NPOなどが議論の受け皿として期待される。
●政治の劇場化
多くの人が政治に興味を持つのはありがたいことだ。問題は、この興味が投票行動にまで結びつかず、政治決定過程への参加者が限られていることだろう。
有権者には、メディアの中の虚像と現実の乖離に対して厳しく目を光らせ、確固とした判断基準を持つことが求められる。一方で政治家の側にも、メディア受けのためだけに自分の主張を作るのではなく、「劇場」の中で翻弄されないだけの高い見識が必要となるだろう。