[2006年9月25日 METI情報]
経済産業省の政策や情報を集めた専門紙『METI情報』の取材を9月7日に受け、そのインタビューの詳細が9月25日号に掲載されました。
| 資源エネルギー安定確保は国の生命線 |
日本が提唱した東アジア経済共同体等の形成
小林温経済産業大臣政務官にきく
今回は、去年11月、経済産業大臣政務官に就任した小林温氏のインタビューである。小林政務官は、昭和39年生まれの今年41歳。平成元年に早稲田大学政治経済学部を卒業後(在学中にジョージワシントン大学留学)、松下政経塾で地方自治を学んだ後、3年に再度渡米。大手法律事務所で日米通商関係を担当するかたわら、ジョンズ・ホプスキンス大学の大学院客員研究員として迎えられ、米国の東アジア政策の研究にもあたった。6年、父の急逝で帰国。福島県猪苗代町で書籍・事務販売機の家業を継いだ。その後、年金関連のコンサルティング会社、中小企業向けのインターネット関連会社を設立。13年、参議院選挙で初当選し、参議院自民党副幹事長、同院経済産業委員会理事、等を歴任し、17年、経済産業大臣政務官に就任した。地方の商店街から国際的な経済・社会までを実働の舞台として状況を切り開いてきた小林氏は、それぞれの現実に、持ち前のチエとチカラをフル回転させて状況を切り開いてきた。そのフィールドはまさに経済産業賞と同一。現職就任後も精力的に飛び回り、その一つの成果となる著書も近日出版の予定だ。
―経済産業大臣政務官に就任し、さまざまな政策に関わって来られたわけですが、いかがでしたか。
小林温経済産業大臣政務官 私自身、選挙に出る前はベンチャー企業の経営をしていたので、特に中小企業の問題、あるいは自分が仕事としていたITやベンチャーなど、自分なりの体験をしてきた部分については、政務官になる前から経済産業委員会の理事もやらせていただいたし、自民党の中でもそういった関係の部会で積極的に発言もさせていただいたので、この仕事をやらせていただいたこと、さらに行政側の立場から同じ問題を見つめるということで、極めてやりがいのある仕事を与えられたと感じている。
その中で、経済産業省という役所自体が、特に民間あるいは企業活動と行政の接点となっており、また、資源のない我が国がさまざまな付加価値をつけて経済をこれまで発展させてきて、さらに未来に向かってそれを大きくしていかなければならない中で、通産省時代から大きな役割を果たしてきたことを実感した。
さらに、省の幹部をはじめ、若い職員の皆さんも含めて、明確にそうした日々の行政運営に取り組んでいる姿を見て、こういう機能がさらにしっかりと認識されて活躍の場が広がっていくことが、これからの日本経済の発展のためにも必要だと痛感するし、一年ほどいた経験も踏まえ、これからも、この分野で仕事をしていきたいと考えている。
―「新経済成長戦略」、「経済成長戦略大綱」を経済産業省のリードで取りまとめ、立場的にもいいポジション取りができたと思います。このほど概算要求も出ましたが、「新経済成長戦略」の具体的スケジュールはどうなっているのですか。
小林 一つは、日本の経済は曲がり角にきていると思う。急速に少子高齢化が進むということで人口減少の逆風をどう乗り越えていくか、そしてこれから、それに負けない強靭な体力を我が国の経済自体がつけていかなければいけないという状況があるのだろう。
その中で二階大臣の就任を機に、「新経済成長戦略」を策定したわけだ。例えば技術革新(イノベーション)や生産性向上、さらにアジアの成長力をどう日本が取り組んでいくかという視点を盛り込んで、新しい時代に合った経済成長を実現するための道筋を示したということで一つの出発点になったと我々は考えている。そういう意味では、今後10年という長い期間にわたって、日本の経済構造はどうあるべきかということを示せたのではないかと自負している。
その中で、例えば二階大臣が国際会議に参加して提唱され、注目もされているのが、一つにはASEAN+6との自由貿易協定、将来的に東アジアの経済共同体について、日本側がその役割を積極的に果たしていこうということ。それから、東アジア版のOECDを構築して、事務局を日本に置くのではなくASEANの中に置き、その事務局機能を我が国の持っているノウハウも含めて提供して、地域全体の経済の枠組みづくりに貢献していこうというものだ。
さらに、「アジア人財資金(仮称)」構想は、アジア地域から今まで以上にたくさんの留学生等を招いて、しかも、経済界と一緒になって、卒業後あるいは研修後に日本の企業で経験も積んでもらって、日本や母国で活躍いただこうというのもある。
こういうことを通じて、ともに経済成長を実現していこうというメッセージをアジアに対して送ることもできたし、アジア以外の地域に対しても我が国の意気込みを示せたと考えている。
そのアジアを基本に、またグローバルにも、我が国の経済に付加価値をどうつけていくか、これが、これまで以上に極めて重要だと考えており、世界の中のイノベーション・センターを目指していく。
その中で、これから成長が期待される燃料電池、ロボット、情報家電といった、我が国の国際競争力の核になるであろう産業分野を見極め、それを大きく伸ばしていこうという政策を打ち出しているところだ。
既に実施段階に入った「成長戦略」
小林 国内に目を転じること、この一年間でいろいろな法案を成立させ、政策も提案しているが、地域の特性を活かした地域経済の活性化がやはり一つの目玉になる。地方の時代の到来と長らく言われているが、今までも東京一極集中のようなことが現実的にはあるわけだし、景気回復が現実的なものとなっている中で、地域経済も都市部だけではなく回復をさせなければいけない。その地域の特性に着目していこうということだ。
一例として、中小企業の中で優れたモノづくりをしている300社を選んで公表させてもらった。どういう意味があるかというと、普段自分たちと同じレベルで、同じような規模で活動している会社が、地域の特性を何らかの形で生かしたり、独自の発想で飛躍的な成長を遂げている例を紹介することで、ああいう会社がこれだけ大きくなっているのだから、我々だってできる、あるいはあの地域が全体として伸びているのだから、我々の地域も同じように自分たちの特殊性を見出して頑張れるのではないかと。そういう意味では、極めて有意義であると考えている。
―好評ですね。それに続いて、「がんばる商店街77選」、「知財100選」も出ました。
小林 そうしたものは、普段同じレベルで頑張っている人たちが、こういうやり方で飛躍したんだということを知る上で極めて意味があり、今回の“選”はいい取り組みだと我々も考えている。
先ほどお話しにあったように、「新経済成長戦略」をまとめたところ、与党と政府との話し合いの中で、経済産業省が中心になって、「新経済成長戦略」をベースに「経済成長戦略大綱」をつくれという指示をいただいたわけだ。これは、経済全体を横断的に見ることができる省庁として、こういう時代にこそ経済産業省の役割が重要だと認識いただいていた結果だろう。
またじ民党本部の中でも、歳入・歳出一体改革の議論で、歳出面をどれだけ削ることができるか、効率的な小さな政府をつくっていって、それを国民の皆さんに示すことができるかという点に、大きな努力をしているところだ。これは、与党サイド、あるいは政府からすると今までになかった努力のあり方だ。その一方で、車の両輪の片方として、他省庁の成長政策も取り組む形で戦略大綱の策定をさせていただいたことは、意味もあるし、時代的な要請だろう。
先ほどご質問のあったスケジュールだが、短期、中期、長期に分けた工程表を、大綱に沿って策定をしていき、それを毎年見直してローリングしていくことになっている。基本的には、戦略大綱を、世界第二位の経済大国である我が国のこれからの経済成長のためのバイブルとして、中・長期的な部分も含めて使っていくことになるだろう。
「新経済成長戦略」の中では、2.2%程度のGDP実質成長率を見込んでいるが、この試算の仕方も、経済財政諮問会議なり、内閣府なりでつくっているものに比べると、それぞれの主要施策分野ごとに試算をして、それぞれのGDPに対する成長寄与率がどれぐらいあるかを積み上げで計算している。こうした数字の出し方も、普段幅広く全産業を見渡している経済産業省として特色のある部分だし、逆にこの点が我々の強みだ。
我々は、人財立国というキャッチフレーズで、生産性の向上を図るとともに、イノベーションを生み出すような人材の育成も併せて行っていこうと考えている。こうしたヒト、モノ、カネ、ワザ、チエに対して横断的な政策を実施しようというのが一つだ。
また、GNI(国民総所得)という数値を経済成長見通しの中で使っている。これは、配当所得、知財によって生まれる所得なども経済成長の中に織り込んでいくということだ。これから我が国が海外に持っている様々なリソースを提供することによって得られる付加価値収入も経済成長の中に織り込んでいくということで、このGNIという数値を経済産業省が使うことは、我が国のこれからの成長の方向性を示すことになるだろう。
「経済成長戦略大綱」は、「骨太の方針2006」の中にも盛り込まれており、次の政権の目玉にもなるが、3000億円規模の経済成長戦略推進要望の設定もされている。ここは大胆に、大綱を実現するために予算配分のメリハリをつけていくということで、この点については引き続きわが省が舵取り役となって、政府・与党一体となって大綱の実現のためにもしっかりと仕事をしていきたいと考えている。
―既に、実現していくための行動に入っているわけですね。
小林 絵を描いて、その推進役として、あるいはヘッドクォーターとしての経産省に期待されている枠割りも大きい。3000億円予算も、逆に言うと、国内的にも国際社会から見ても、新しい日本がどういう方向に行こうとしているのかを経済成長を通じて示すことにもなるので、これは非常にいい試みだ。
地域経済の活性化が最重要課題
―先ほど、地方の活性化のお話がありました。今、地方分権の方向で動いていますが、交付金の問題等もあり、三位一体改革はなかなか進んでいないのが現状です。そうした中、財政破綻する市もでてきており、地方自治体の状況はかなり深刻化してきていますが、その辺についてはいかがお考えですか。
小林 私も20代後半から30代前半は地方の小さな商店街で書籍と文具の販売をしていたので、地方の疲弊は人ごとではない。我々も、当然マクロとしては景気が回復していることは事実として申し上げているが、いまだに大都市と地方、大企業と中小企業の温度差が存在しているわけだ。この温度差をどうするかが、景気回復をさらに持続的にしていくために極めて重要だ。経産省のさまざまな政策の中でも、地方に活力を与えるためにはどうしたらいいのか、何が必要かということで、例えば中心市街地活性化の新たな取り組みも念頭にある。
そうした中、三位一体の改革もまだまだ途上だし、基本的には補助金の見直し、交付税・交付金の見直し、財源移譲を、もう少しわかりやすい形で実現していく必要がある。また、中央対地方という対立の構図も見え隠れしているので、こうした部分も政府と地方自治体とがしっかりと議論して、あるべき姿を明確にしていく必要があるだろう。
いずれにしても、それぞれが地方の特性を生かして、生き生きと地域を発展させていくということを考えると、霞ヶ関にいては目の行き届かないところ、わからないところがあるので、できるだけ現場に近いところで予算配分をして、あるいはメリハリもつけるということになる。この点については、さらに経産省としても全体の議論の中で強調していく必要があると考えているし、経産省の政策の中でも、地域の活性化に重点を置いた法律の改正、予算配分も行っていかなければならないと考えている。
―地方の各経済産業局がこのところかなり活発に動いていて、企業や地方の方々との接点を持ち、それが功を奏しているとうかがっています。
小林 拡大経済産業局長会議に我々も出席するが、各地域がどういう現状にあるか、また、よくなっている地域はなぜよくなっているのか、停滞しているところはなぜよくならないのかということも、現場に近いところにいる方から伺うとよくわかる。地方の経済産業局は、そういう現場の企業活動の駆け込み寺であり、そこからさまざまなことを発信して、目配り可能な政策を展開したりと、組織的に対応しており、経済産業行政全般を行う上では非常に有効だ。さらに言うと、それをさらにブレイクダウンして、地方の時代が進展していく中で、そういう機能を強化していくことも必要ではないかと、私などは考えている。
―人材を地方に送り込んでいくことが重要になってくるのではないかと思います。
小林 当然財源の移譲も起こって、それに合わせて権限も移譲されれば、今のように霞ヶ関がコントロールするのではなく、各現場で、例えば人の採用も行って、優秀な皆さんがそれを生かしていくことが可能になるだろうし、三位一体改革の中でもあわせて実現していかなければならないと考えている。
“自ら助くる者を助く”中小企業政策
―もう一つ、温度差があるのが中小企業ですが、中小企業対策についてはどうお考えですか。
小林 私自身も中小企業の経営者だったと申し上げたが、今のように大企業主導で景気回復を国全体として実感することはできない。そのギャップを埋める、あるいはバランスを取ることが可能になるような政策が必要だ。
そのために、一つは、これまで公共事業に依存してきて、その公共事業がなくなるとどうしようもない状況に陥ってしまう地方の経済を、もっと自立的構造にして、産業の活性化を図るべきだろう。その際、行政からそうした予算配分、手当てをするのではなくて、自立を図ろうとする気持ちを持った地域に対して、応援をどうやっていけるかが重要だ。
企業についても同じで、例えば中小企業の中でもやる気のある中小企業、企業革新を自ら努力しながら実現していこうという企業、あるいは潜在力があって、こういう部分を強化すれば伸びるという企業について応援していこうと考えている。今までは一律に、中小企業すべて、やる気あるところも、ないところも含めて応援するという体制だったが、やる気があって、潜在的にもまだまだ伸びるところに、しっかりと手を差し伸べることができるような応援体制を作っていかなければならないと考えている。
それと同時に個人に着目すると、ここででもやはりやる気がキーワードになるが、例えば起業あるいは再起業を目指そうという個人の応援をしようと考えている。つまり地域と起業と個人それぞれで、自立的にやる気がある方々にある程度ターゲットを絞って応援していくことを、同時に推進していきたいと考えている。また、そのためのプログラムも用意している。
まず、地域の場合は「地域資源活用企業化プログラム」というものを用意して、例えば、産地の技術、農林水産品、伝統文化といった地域の独自性を活用した新商品、新サービスの開発、販売を強力に支援していきたいと考えている。企業にとっては、資金がしっかりと循環するかが大事でもあるので、その円滑な資金供給を目指していく。これまでは不動産担保や過度な個人保証が当たり前のように行われてきたが、これを前提にしない融資制度を、さらに使いやすい形にし、融資・保証制度の拡充をしていく。さらに、金融の充実・円滑化をしていく。
そういうものを担う重要な一つの組織として、中小企業再生支援協議会というところが、すでに実績をあげてきている。これをさらに充実させることを考えており、特にこれまでの企業再生に加えて、中小企業の経営者が高齢化していく中で、その事業承継の円滑化のために総合的な支援を行っていくことも方針として挙げているところだ。
人の部分については、起業・再起業しやすいような環境整備をまずしなければならないし、そのために、今、総裁選で候補に挙がっている安倍氏の目玉の戦略でもある、再チャレンジの支援窓口を全国に設置して、この部分の環境整備も進めていきたいと考えている。
日本の場合、地域も企業も個人も失われた10年15年の間に自信を失ってしまって、なかなか新しいことにチャレンジできないでいたが、景気の回復を受けて、もう一度、あるいは二度、三度とチャレンジできるようなシステム、あるいは保証できるような制度を通じて、みんなが一度失敗しても大丈夫だと思えるような土壌、雰囲気をつくっていくことが大事だし、そのためのさまざまな制度の充実をさせていかなければならないと、私自身の経験も踏まえて考えている。
―先ほどお話に出た再生支援協議会の実績は非常にあがっています。この取り組みによって、銀行の企業に対する融資の仕方が、事業の内容や技術などを評価するというふうに、かなり変わってきたように思います。地元意識が強く出ていて、いい方向に向かっているのではないでしょうか。
小林 地元に密着した金融機関なり、商工会議所のような組織のほうが、地元の事情もよくわかっているし、企業が持っている技術力、あるいはさまざまなリソースがどこに存在しているかとか、この部分とこの部分をつなぎ合わせると、もっと新しい取り組みが生まれるといった、ノウハウ、アイディアもあるわけだから、そういう機能を持った協議会をきめ細やかに配置していくことは、まさにおっしゃるように非常に意味があるし、これを評価していくことにも意味がある。
―かなり救われている企業が出ているようです。不動産を担保にしないというのは、銀行側からすれば画期的でした。
小林 今、我々経産省でも、不動産以外の担保として、例えば「売掛債権担保融資保証制度」もあるし、知財を担保に融資ができるような枠組みもつくっている。土地以外の、各企業が有している資産を有効に活用して、企業活動をさらに大きくしていくための選択肢が広がっているということだ。そういう点でも、地域の事情、あるいは個々の企業の実情がわかっている方が専門的な立場からアドバイスすることは、その制度を使う側からするとありがたいだろう。
―最近は、複数の省庁にまたがる制度も多いので、一箇所に届け出をすれば全部大丈夫というワンストップのシステムもできつつあって、すごく画期的だと思います。それでないと、なかなか利用できませんね。
小林 これは経済産業省だけの問題ではない。私自身も会社を作って届け出をしようと思ったときに、いろいろな窓口に行かないとできなかったという経験もしている。また、新しい取り組みをしようと思っても、窓口がばらばらなために、本来ならば少しの時間で済むことに手間がかかったということもあったので、利用者の視点に立って、使いやすい行政の仕組みはどういうものかということを、地元に密着した制度をつくることと併せて進めていかなければならない。
国の将来のグランドデザインを描く
―構造改革が小泉内閣のテーマだったわけで、実際、さまざまな改革が進められてきたと思います。成果はこれから出てくるでしょうが、修正しなければいけない部分、強化する部分と、いろいろ判断しなければいけない時期に入っていくと思います。この構造改革に対する政務官のご意見はいかがですか。
小林 私は小泉政権誕生の時期に選挙に出て当選しているので、小泉改革の中で5年間を過ごした。一つには、小泉改革とは何かということ、まさに官から民へ、そして地方にできることは地方でということを徹底したということだ。小泉内閣の船出の当時は、公共事業を減らしたら経済回復などできるはずがない、デフレの克服もできるはずがないと、反対派の皆さんは口を揃えて言っていたが、今は誰もそういうことを言わなくなった。不良債権処理も含めて、民間の力を最大限に生かして、国の役割は補完的であるべきだと徹底したのが小泉改革の方向性だったし、公共事業に頼らずに民事主導で経済回復を成し遂げたということは、小泉改革の成果と評価してもいいと考えている。今、総裁選の中でも訴えていることだが、この基本路線はこれからも守っていかなければならない。
あるいは激動する国際環境、それから急速に進む少子高齢化を考えると、さらに加速させる必要も一方ではあるだろうと私は考えている。
小泉改革とは何だったのかと考えると、“破壊者”だったと言える。その過程においては、例えば政府系金融機関の改革、歳出削減、あるいは特別会計の改革に共通している聖域を設けずに徹底的に削れる部分は削ったということだ。国民からいただいた大事な税金を基に、特別予算を含めて一般予算はつくられているわけだから、その部分はこれからも継続していく必要があるだろう。
逆に、そのことを国民の皆さんに目に見える形で示して、政府は頑張っているなとわかるようにするべきだろう。今までのようにすぐに補助金だ、交付税だ、あるいは公共事業だということでやってきた結果が800兆円を超える財政赤字になっているわけだから、そこは国民の皆さんにご理解いただいて、今申し上げた方向性は継続する必要がある。
仮に修正が必要だとすれば、これからは徹底した努力をした上で、我が国の将来のグランドデザインを描く中で必要なものは何なのかを議論するということだ。その時期も遠からずやってくるだろうと考えている。
例えば、資源エネルギーの安定的な供給を実現するには、今までのように民間に任せて、国はその補完的な役割をすればいいという時代では、実はなくなってきている。石油公団も廃止されてしまったが、本来であれば資源開発、あるいは資源獲得のために資源国と関係を結ぶ、あるいはリスクを負う可能性のある日本企業が安心して活動ができるように、例えばJBIC(国際協力銀行)の機能をどう使うかといったことが求められているのだろう。
つまり、我が国がこれから少子高齢化を迎える中で、国民がいっそう安全・安心に暮らしていくためにはどういった部分を伸ばし、そのための予算をどの部分にしっかり確保していくかというグランドデザインをもう一度描いて議論することが必要だと考えている。
これは、ともすると予算のばらまきや、聖域をつくり、要らないものに再び予算をつけてしまう議論にもなりがちだが、そこは我々政治家のこれから先の仕事になる。
また、我が国がこれから、資源のない中で付加価値をつけて競争力を持った経済国家として生きていくためには、どの分野を伸ばしていくべきなのかを、あまたある産業分野の中から見つけ、戦後、傾斜生産方式で鉄鋼・石炭にその資源を投入してきたように、国家的な枠組みの中で経産省が役割を果たす場面もあるし、必要だと考えている。
一つの例でいうと、大綱によってつくられた3000億円の「経済成長戦略推進要望」は、逆に言うと、経済産業省がこれからの我が国のグランドデザインをどう描いていくかが問われている部分だろう。
―大変なのはこれからですね。資源エネルギーは、今、世界的にも獲得競争が起きており、これからエネルギーをどう安定的にかくほしていくかは、ものすごく重要な課題だと思います。しかし、開発はなかなか実績が上がりません。そこは国策できちんとやっていかなくてはいけない。
小林 この一年間でアフリカの資源国であるリビアやスーダン、それに中東も六カ国を回った。南米の資源国やモンゴルの炭田なども見て回り、今度それをまとめた本を、『国家の生命線〜戦略的資源・エネルギー外交の確立に向けて〜』というタイトルで出版する。
昔、石油はお金さえ出せば買えると思っていたが、今はそうではなくなってきている。
例えば、資源国は限られた資源をいかに有効に使って国の経済を発展させていくかと考えている。日本は若干出遅れた感はあるが、では日本はどういうところに優位性があるのかをしっかりと見極めるべきだし、同時に資源国は何を求めているのかを理解する必要がある。
中東や南米に行って、“我々は資源がほしい。だから我が国の民間企業の活動のサポートをお願いします”と、向こうの政府に言うと、昔であればODAをつけてくれ、橋を作ってくれ、港湾を作ってくれという話だったが、今は、例えばITのプラットフォームの技術提供をしてほしいとか、環境技術がほしいといったように、自分たちの経済を高度化するために必要なものを要求してくる。そういう先方のニーズを聞くと、実は日本が世界的にも優位性をもっており、提供できるものはたくさんあるわけだ。
中国とはさまざまなところでぶつかるが、中国は逆に、お金で援助したりして資源を獲得している。しかし、それは旧来のやり方であって、今資源国は、それよりも20年30年先の自国の経済構造がどうなるかに興味があって、それに必要なものをほしがっているわけだ。そこを政府がというよりは、今までの官・民の役割の分担の中で、官の役割をもう少し見直す必要がある。
かつ、JOGMEC(独立行政法人石油天然ガス・鉱物資源機構)、JBIC(国際協力銀行)、さらには大使館、JETROなどの機能を活用した上で、民間も含めて我が国が持っているさまざまな技術、リソースを相手国のニーズに合わせてタイムリーに提供できるかどうかが、資源獲得のための非常に重要なポイントになってくるだろう。
―そういう意味では、経済産業省が資源外交をした方がいいのではないでしょうか。
小林 それはそうだ。そのリスクを民間だけに負わせてはいけない、特に資源開発では。
国もリスクの一端をしっかりと担うべきだという意識を持って、官民でうまく組み合わさって100%の力を出しても、現状を考えると、そう簡単に資源を獲得できるものではないので、かなり難しい作業になるだろう。
付言をすると、石油やガスはニュースになりやすいので、いろいろなところで大変だと言っているが、一方で銅、鉄、鉱、ウランも含めて、さまざまな資源が高騰しているというのが実情だ。さらに、日本にとっては大変重要なインジウム、モリブデンといった希少金属も、ここ4、5年で、中には10倍ぐらいになっているものがある。インジウムがないと、日本が得意とする液晶がつくれない。そのインジウムの80%ほどを実は中国が握っているという事実もある。つまり、我が国が必要としている資源は何であって、それが今どういう状況に陥るかもしっかりと認識しなければならない。特に我々の立場ではそうだし、そういうものも含めて資源エネルギーの獲得は、国家にとっても本当に大事な生命線だということを、政治家として啓蒙したり、仕事にしていきたいと考えている。
“専門的・職人的”政治家になりたい
―最後に、議員としての抱負をうかがいます。
小林 民間でいろいろな仕事をしたこともあって、職人的な政治家になりたいと考えている。今の資源エネルギーの話もそうだし、自分がやっているIT、ベンチャーというのは新しいテーマだ。ということは、自民党の中でも先輩方はあまり触っておられない。しかし、これからの日本の産業構造や産業の行く末を考えると、極めて重要な政策分野だと思うし、そういうところをしっかりと専門にして、その部分で成果をだしていきたいと考えている。
また、資源エネルギーについても、モンゴルで炭田に行ったり、チリで銅の鉱山に行ったり、ペルーで亜鉛の精錬所に行ったりというフィールドワークのようなことを、今年はかなりやらせていただいた。それから、クウェートで世界最大級の油田にも行った。そういう意味でいうと、資源はとても泥臭い部分があり、そこは政治的なリーダーシップが必要な分野なのだろう。
そこで、その成果が一般的に評価されるかどうかは別としても、政治としてコミットする必要がある分野で自分なりに成果を上げていって、結果、我が国の経済成長、これからの国家安全保障につながるような仕事ができる議員になれるよう、時間をかけてがんばっていきたいと考えている。
―お忙しいところをありがとうございました。