[2007年6月28日 朝日新聞]
3議席の行方 07参院選
自民の返礼 公明はまつ
同じ政権与党でありながら、今回の参院選は競争相手となる自民と公明。衆院選でも統一地方選でも自民候補に票を出したのだから、今回は返礼を――。公明から自民への働きかけが強まっている。
5月27日、小田急線本厚木駅前。太田昭宏代表を招き、公明の松あきら氏(59)の演説会が開かれていた。
詰めかけた約800人の支持者らのなかに、昨年10月の衆院16区補選で初当選した自民の亀井善太郎氏がいた。松氏は演説カーの上から亀井氏の名前を紹介し、支持者に向けてこう呼びかけた。
「みなさま、衆院16区補選はありがとうございました」
父親の亀井善之・元農水相の死去に伴うこのときの選挙で、亀井氏は約3万票差で民主候補を破った。16区内の公明票は、同じ3万票とみられている。公明は、太田代表が選挙区入りするなど積極的に肩入れした。ある公明幹部は「うちの候補者並みの選挙をやった。通常の衆院選だと神奈川に18区あるので、これほどの力の入れ方は無理だが、ひとつの選挙だったからできた」と話す。
支持者に松氏が発した16区補選のお礼の言葉は、あのときの恩義を忘れないようにという、亀井氏に向けたメッセージと受け取る人もいた。
自民の小林温氏(43)の当選をめざす立場の亀井氏の陣営幹部は、こう漏らす。「補選で120%の支援を受けた以上、公明には頭が上がらない。派手には動けないが、まったくやらないわけにはいかない」
今回参院選で、改選数3の「3人区」は、神奈川のほか4府県ある。自民、公明両党は、激戦が予想される選挙区として自民が2議席獲得をめざす千葉を「公明が自民に協力する」、自公が1人ずつ公認候補を立てる埼玉、愛知を「自民が公明に協力する」という選挙協力を結んだ。残る大阪と神奈川は「それぞれが自分の組織で全力を挙げれば、与党で2議席取れる選挙区」(自民幹部)との位置づけだ。
だが、神奈川選挙区でも公明から自民への働きかけは強まるばかりだ。
自民の衆院議員は今月半ば、公明の支持母体である創価学会の地元事務所で松氏への支援を迫られた。
「自民をやらず、ほかの候補をやるのは無理」と拒む議員に、学会関係者は「衆院選であれだけやったんですから」とたたみかけた。
議員「5千票ぐらいですか」
学会関係者「よく分かりますね。そうです」
公明が危機感を深めているのは、民主が2人を擁立したうえ、与党として年金問題の逆風にさらされているからだ。これまでは創価学会票を基盤に、宝塚歌劇団のトップスターだった松氏の抜群の知名度で無党派層を取り込んできたが、党関係者は「宝塚時代の松氏を知らない若い世代が増えている」とも懸念する。
公明の関係者は「国会議員、県議会議員と自民にはいろいろ働きかけている」と認める。
2年前の「郵政解散総選挙」で、自民は16人が当選した。だが、次の総選挙で追い風があるとは限らない。自民の若手衆院議員は、こう懸念する。「自民議員は全員、公明に借りがある。松氏が落ちるようなことになれば絶対にまずい。次の衆院選がやばくなる」