[eガバメント視察訪米記 その3 〜 日本での取り組みについて]
縦割り行政の弊害が米国のeガバメント構築の大きな障害になっていることは、以前、ご紹介しましたが、もう一つの障害が、CIO(Chief Information Officerの略で、組織のIT化戦略の責任者です。最高情報責任者とも呼ばれます)のスタッフと予算の不足です。
議会側からみると、OMB(行政管理予算局、Office of Management and Budgetの略です)でeガバメントを担当しているチームの人数と予算が小さすぎるため、十分に力を発揮できていないということでした。現在、OMBがITシステム構築計画の策定に使える予算額は200万ドルで、これで政府全体(つまり省庁横断的)のシステム構築についての全体像を企画しています。また各省庁はそれぞれおよそ500万ドル程度、政府全体で1億ドルほどとまだまだ小さな額に過ぎません(実際の構築には530億ドルかけているそうです)。また、NASA(航空宇宙局)のCIOオフィスのスタッフは10名強ということでしたが、全体で1万数千人にも上るスタッフと比べるといかにも少ないという感じです。
これらの障害を克服するために日夜奮闘しているのが、9月にワシントンDCでお会いしたマーク・フォーマン氏(OMBのIT・eガバメント担当ディレクター)とそのスタッフです。確かに、スタッフ数が少なく、少しずつしか前進していないようですが、就任から約1年経ち、着実に成果を上げているというのが議会や民間の評価でした。
彼は、各省庁からあがってきたITシステム構築の予算要求を精査し、承認・否認する権限を有しています。仮に複数の省庁からある課題に関するITシステム予算があがってきた場合、フォーマン氏はその中で重複した部分、無駄な部分を割り出し、差し戻すというのです。具体的な例では、今話題のホームランド・セキュリティに関しては、全省庁からあがってきた予算に対して、一旦、すべて却下し、省庁間での調整が行なわれたということです。
日本でも遅ればせながら、各省庁ごとにCIOを任命して、CIO連絡会議を組織しました。しかし各省庁の利害を代表するCIOの合議制では、行革も視野に入れた全体の方向性を決定するのは困難です。強力なリーダーシップと権限を持ったCIO連絡会議の責任者が必要だと思います。また、米国では政権ごとに政治任命で官庁幹部が入れ替わり、常に民間最先端のIT分野の知識を持った人材がCIOに任命される可能性がありますが、日本のように官庁の内部登用のCIOでは、各種の政策決定に限界があるのも事実です。このCIOをはじめとしたIT分野の人材登用の問題は、国家公務員の任用の在り方や報酬の体系にも、その見直しを突きつけています。
米国のeガバメント政策をそのまま焼きなおして日本のeジャパン戦略の電子政府部門に適用するのは、国家の歴史、国としての成り立ち、制度、政治・経済・労働文化など、さまざまな相違が存在するがゆえに、困難であり、またあまり意味がありません。しかし、米国政府も過去10年間の取り組みにおいて、かなりの紆余曲折を経てきたことが今回の多くの関係者との面談を通じて、明らかになりました。それは政治的対立、官僚機構の抵抗など、日本にもおなじみのものです。この経験というのは、同じ人間の営みですから、日本でも大いに参考にすべきであると考えました。