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ゆたかの考え

[eガバメント視察訪米記 その2]

 米国政府によるeガバメント(電子政府)構築が始まったのは1993年のクリントン政権発足からで、行政改革の一環という位置付けでゴア副大統領が中心となってさまざまな試みを行ってきました。そして1997年にはCIOカウンシル(CIOとはChief Information Officerの略で、組織のIT化戦略の責任者です。最高情報責任者とも呼ばれます。CIOカウンシルは各省庁のCIOが集まって行政府全体の情報化戦略について議論する会議です。)という省庁横断的な組織を立ち上げ、それをホワイトハウスの中のOMB(行政管理予算局、Office of Management and Budgetの略です。)に置きました。それにもかかわらず、実際に米国のeガバメントの目玉であるFirstGovが立ち上がったのは2000年9月と、クリントン政権末期になってしまいました。

 FirstGovは米国政府のポータルサイトであり、市民、ビジネス、政府(州・地方政府)がそれぞれのニーズに沿って必要情報にアクセスし、手続きが行えるように設計してあります。つまり、同じトピックでも省庁横断的にコンテンツを調整し、「ワンストップ」でニーズを満たすことができるようにするというのが基本的な考え方です。OMBのフォーマン氏は、すべてのユーザーが「3クリックで」必要なページにアクセスできるようにするというのが目標であると説明してくれました。つまり、ユーザーがニーズを満たすためにより簡単に「目的地」にたどりつけるようにすることに政府が注力しており、どの省庁にアクセスしているかについては知る必要がないということです。

 ところが、この設計を実行に移そうとしたところ、政府は大きな障害にぶつかったというのです。それは省庁における縦割り行政で、これがeガバメントの歩みを遅くしてきた最大の障害となっているようです。日本では非常に馴染み深い単語ですが、米国でもそれが現実でした。

 その第一が省庁間および同一省庁内の部署間における縦割り行政です。
 例えば、輸出に関しては、商務省での手続きが必要ですが、さらに関税については財務省が関係してくるなど、複数の省庁の手続きを経る必要があります。これらを少なくともユーザー側から見る限り一つにしようというのがeガバメントの考え方ですが、実際にホームページのコンテンツ(中身)を作るのは担当省庁ですから、その調整が非常に困難だというのです。

 これは同一省庁内でも同じことが言えます。例えばNASA(米航空宇宙局、National Aeronautics and Space Administrationの略です。)ですが、新たに就任したオキーフ長官に任命されたストラスマンCIOの下で、NASAの統合ポータルサイトを作ろうとしているそうです。しかし、NASAでは伝統的に、それぞれのオペレーションを行っている実働部隊、つまりヒューストンのジョンソン・センターやフロリダのケネディ・センターなど、スペースシャトルや衛星の打ち上げなどを行っている部署の力が大きく、しかも組織が巨大なため、それぞれが有しているウェブサイトの統合は非常な困難を極めているということでした。

 また、CIOの権限もまだまだ不十分だということです。例えば、各省庁内の予算・決算、出入金など財務に関するシステムについては、依然、CFO(最高財務責任者)が権限を有しているという現状にあり、CIOがタッチできないということです。しかし、この財務システムとその他のシステムが別々で稼動していると、さまざまな不都合が生じるであろうことは想像に難くありません。