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ゆたかの考え

[確定拠出年金の今後を米国401(k)から展望する (1)]

◆確定拠出年金の始動
 確定拠出年金法の施行から約1年が過ぎようとしています。この間、企業が主体となって運営する企業型の確定拠出年金については7月末現在で134社が導入し、さらに今年度内の導入を目指す企業は500〜600社にものぼると伝えられています。かたや、自営業者等が任意で加入する個人型の実績は全国で3000人強と、受付開始が企業型より3ヶ月遅れだったとは言え、まだまだ認知度は低いようです。
ご承知のとおり、日本における確定拠出年金制度は米国の401(k)プランをモデルとし、1998年の労働省案、1999年の4省庁案を経て、昨年10月から施行されました。
 私は米国の経済や社会における401(k)のインパクトの大きさに90年代半ばから着目し、米国の巨大レコードキーピング会社や金融機関の視察、ロスIRAで名高いロス上院議員との意見交換などの数回の本格的な現地調査を実施しました。20年の歴史を持つ米国401(k)の法制と運営の現場を知る立場から、誕生したばかりの確定拠出年金の今後を展望したいと思います。

◆企業の声から思うこと
 改めて述べるまでもなく、確定拠出年金の最大の特徴は税制優遇にあります。日米を問わず優遇には限度がありますが、そのコントロール方法の違いが両国制度の「使い勝手」の差を生んでいるように思えてなりません。企業型の導入企業から聞こえてくる従業員拠出の容認を求める声からも、その一端がうかがえます。

◆拠出額の決定者−日本
 拠出限度額の日米の格差はこれまでも各方面で論じられており、改善に向けての動きも見えています。しかし両国の制度を俯瞰すると、より大きな差は拠出額の多少ではなく、その金額を誰が決めるのかという点にあるのではないでしょうか。
 企業型確定拠出年金の誕生の大きな契機は、退職給付債務の問題でした。退職給付債務の削減のため、企業型には現行の退職給付制度の移行受け皿としての役割が期待され、さらに税制優遇を獲得するための綱引きもあって、結果的に企業型では個人が拠出額を選択することは認められませんでした。つまり、個人が給与の内枠から拠出するのではなく、企業が労使合意の規約に基づいて、給与外枠で直接拠出する制度となりました。結果的に、現実には拠出限度額に達しない従業員が、若年層を中心にかなり存在します。しかし、個人的には税制優遇枠に余裕があっても、企業型へは従業員拠出ができず、また企業型と個人型の重複加入の道も閉ざされているため、個人に為す術はありません。

◆拠出額の決定者−米国
 この観点からすると、米国の401(k)と日本の企業型確定拠出年金は似て非なるものです。米国の401(k)では、従業員が給与の内枠から拠出額を選択します("Cash or deferred"=「現金:給与受取り」か「繰延べ:401(k)拠出」か)。"Deferred"(繰延べ)を選んだ場合、引退後の引出し時まで所得税がかからないという恩典が与えられます。つまり、税制恩典を受けるか否かの決定権は従業員にあり、金額の変更も企業によって許容される頻度に差こそあれ、柔軟に行うことができます。

◆個人の意思決定の尊重を
 米国の401(k)では大きな枠の中で個人に選択の自由を認め、日本の企業型では窮屈な枠の中で従業員一律の拠出ルールにのっとらせる。まるで、両国における「個」に対する姿勢を端的に表しているとは言えないでしょうか。
 従業員拠出の容認を求める企業の声は、確定拠出年金の制度本来のあり方と個人の意思決定を阻害する現行制度の矛盾に対する訴えにほかならないと考えます。確定拠出年金の発展を心から願う立場として、制度を利用する国民の声に一層耳を傾けてまいります。