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国会発言録

[第166回 参議院 経済産業委員会 2007年4月10日]

小林ゆたか写真

○小林温君

 おはようございます。自民党の小林温でございます。

  まず今日は、弁理士法改正の質問に入る前に、知財政策、特許行政について若干全般的な質問をさせていただきたいというふうに思います。

  昨年九月に発足をしました安倍内閣は、成長戦略としてイノベーションの促進を重要政策課題の一つとして位置付けております。私自身も、従来から特許制度はイノベーション促進のかぎとなるというふうに考えておりまして、その意味で知財政策、特許行政には大いなる関心を持って取り組んでまいりました。

  甘利大臣は、経済産業大臣に就任される前から自民党の知財戦略調査会長を務められるなど、早くから知財政策の重要性を主張され、正に我が国知財政策をリードしてこられたと承知しております。ちなみに、今、知財戦略調査会長は松田岩夫先生でございまして、不肖私が事務局長を務めさせていただいておるわけでもございますが、その甘利大臣が知財政策の中核を担う経済産業省の大臣として自らリーダーシップを発揮されるわけでございますので、私としては今後の知財政策、特許行政に大いに期待をしているところでございます。

  米国の第十六代大統領リンカーンの言葉に、特許制度は天才の炎に利益という油を注いだというものがございます。先進的な発明をして特許という独占権の保護を受ければ利益が得られると。ですから、莫大な費用が掛かっても、更にそれを上回る利益を生み出す発明をしようと研究開発をする。その結果、発明が生まれ、それを特許として保護し、それによって得られた利益を使って更なる発明をしようと新たな研究開発に取り組む。こうしてイノベーションが次のイノベーションを生むというイノベーションの循環が生まれるということの意味だと思います。

  これが特許制度の根幹となっているわけでございますが、ところが、後ほど議論もあるかと思いますが、我が国の特許制度の運用状況を見ますと、特許審査の請求をしてから特許庁が最初に応答するまでの期間、いわゆる審査順番待ち期間が約二十六か月となっております。これはかつてに比べるとこれでも短くなったわけですが、でも、審査を請求してから二年以上も待たされる。米国、欧州の審査順番待ち期間はともに二十二か月程度でございますから、必ずしも日本だけが取り立てて遅いというわけではございませんが、しかしながら、知財立国という観点から考えれば、権利化が遅くなればその分事業化が遅れ、新たな研究開発投資も遅れるということになります。先ほど申し上げたイノベーションの循環が停滞をする、そういうおそれもあるわけでございます。イノベーションの循環を加速しなければならない、そのためには発明の早期権利化、特許審査の迅速化は極めて重要な課題であるというふうに考えます。

  一方で、幾ら審査を早くすることが大事だからといって、莫大な行政コストを掛けることは今の時代には適当ではないと思います。民間でできることは民間にというスローガンがありますが、この民間の活力、しっかりと活用しながら、審査の迅速化と併せて効率化を進めていくことが必要であると考えております。

  そこで、大臣は経産省に入られてからAMARIプランという計画をお考えであると。ちょっと見せていただくと、これうまく英語の頭文字を並べてAMARIプラン二〇〇七と書いてあるんですが、具体的にこの中身について教えていただきたいのと、この取組について今後の方向性をお示しをいただければと思います。

○国務大臣(甘利明君)

 我が国の知財戦略は、まず知財を生み出す環境を整備をすると。そして、生み出された知財の権利化を迅速に図ると。同時に、速いだけではいけませんから、正確で強固なものにしなければならないわけでありますから、迅速かつ正確な審理を行うということ。そして、権利化された知財をいかに活用をしていくか、あるいは流通をさせていくか。そして、流通をした、活用をした、そこから得た利益を更なる知財の創造に向けていくと。そういう創造、保護、活用のサイクルを上昇気流に乗せてスパイラル的に大きくしていくというのが正に我が国の知財戦略であります。

  そこで、小林先生御指摘のとおり、日本のそのスピード感というのは国際比較をするとそう速い方ではない。べらぼうに遅くもありませんけれども、速い方ではないと。これは一つには出願件数が多いということですね。これは悪いことではありません。いいことであります。

  それから、出願件数が多いということもさることながら、滞積している未処理案件が多いということなんですね。根雪と呼んでいる部分が処理されないですからね。加えて、新規案件が多いということですから、これをある時期、根雪を処理するだけの物量的なパワーを投入しなければならないということは必須条件であります。

  そこで、イノベーション促進のための特許審査改革加速プラン二〇〇七、英語の頭文字を取るとAMARIという、かなり無理をされているのかなとも思う感もありますけれども、AMARIプランという、頭文字を取るとなるのでありますけれども。まず、その根雪の部分をしっかり処理していこうということで任期付審査官を大増員をいたしまして、それでこれをしっかり処理をしていくということ。

  それから、先行技術調査の民間外注の拡大。委員おっしゃるように、公務員の数を確保するということはいろいろな制約があります。そこで、民間外注をして先行調査をすると。これがもう既に取られている特許と抵触するのか否かというのは、先行調査は民間に外注をして拡大をしていくと。

  それから、特許審査ハイウェイを含む外国特許庁のサーチ結果、審査結果の相互利用の推進に取り組む。これは国際出願も増えているところでありますから、それぞれの国と連携を取りながら、相手の国で付与された特許の調査結果を活用していってお互いの迅速化を図るということが大事でありまして、それらの取組を一層推進をするということにしたわけであります。

  また、産業界に対しましては、出願内容の事前チェックを含めて、戦略的な知財管理を構築、実行するように働き掛けを行っているところであります。何でもかんでも思い付きに従って出すんではなくて、出す企業自身もある程度の事前チェックはして、これぞ特許というようなものを是非出していただくように、そしてそれをどう企業経営に戦略的に活用していくかという、知財戦略を企業行動の中でとらえていくということに努めてもらえるよう働き掛けを行っているところであります。

  引き続き、迅速で正確な特許制度の構築に向けて努力をしてまいりたいと思っております。

○小林温君

 是非、世界最高水準の迅速的確な審査を実現をしていただいて、知財立国の枠組みをつくっていただきたいというふうに思います。

  次に、中小企業の知財活用に対する支援についてお伺いしたいと思うんですが、例えば私の地元の神奈川県でも、ああ、こういうところもうちょっと知財使ったらいいのになと、有効活用すればいいのになというふうに思う企業があるんですが、そういう経営者の方とお話をさせていただきますと、どうも特許というのは大きな研究開発部門を持った大企業の話である、なかなか中小企業には敷居が高いというようなお話をお伺いするわけでございます。特許出願の手続を行う際の煩雑さとか、コストも高いということで、そこが手を出せない要因になっているということも聞くわけでございますが、実際にデータを見てみますと、年間およそ四十万件の特許出願のうち、大企業である出願上位三百社がその六割を占めている、これに対していわゆる中小企業の出願は一割程度しかないわけです。我が国の事業所数の九九%は中小企業でございますので、高い技術力があるということを考えても、もっと出願があってよいのではないかというふうに思います。

  特許は中小企業にとって大切なものだということは言うまでもありませんが、実績がなかった企業でも、独自の技術を持って特許を取って、それを武器にして大きく飛躍すると、こういう例も見受けられるわけでございます。厳しい経営環境を一発で逆転するような、そういうツールとして、知財の中小企業による活用というものを更に進めていく必要があると思います。是非、特許庁には、単なる審査機関にとどまることなく、自らが先頭に立ってきめ細かい応援をしていただきたいと、ここで申し上げておきたいと思います。

  もう一つ、中小企業の知財活用が進まない一つの要因として、弁理士の皆さんの偏在ということも言われております。つまり、大都市に弁理士さんが偏っていて地方に行くとほとんど弁理士がいない、このことも中小企業の特許出願の大きな壁になっているようでもございます。弁理士会の方々も、支援活動というようなことで、各地方に出向かれていろんなセミナーなども行われているようでございますが、経済産業省としては、この中小企業の知財活用にこれまでどのような対応を行ってきたのか、今後それをどのように拡充強化していくというおつもりか、御所見をお伺いしたいと思います。

○大臣政務官(松山政司君)

 中小企業の知財活用の現状でございますが、小林先生おっしゃりますように、全体の四十万件のうち約四万件の特許出願がございます。そのうち約一万五千件の特許登録がなされております。また、特許を始めとする知的財産を戦略的に活用して成長する企業も大変多いというふうに承知をいたしております。イノベーションを促進するためにも、中小企業の知的財産を活発化することが極めて重要であると思います。

  そこで、経産省では、既に従来から中小企業には、早期審査の実施、先行技術調査に要する費用の補助、研究開発型中小企業に対する料金の軽減といった措置を講じております。今年の一月には、先ほどお話ございましたAMARIプラン二〇〇七を策定しまして、この支援策を抜本的に強化をすることといたしております。

  具体的には、この先行技術調査に係る支援を大幅に拡充をしてその普及及び啓発に努めてまいりたいと思います。

  また、全国約二千五百か所の商工会、商工会議所に設置をしました知財駆け込み寺に弁理士等の専門家を派遣をいたしまして、個別相談会を開催するということにいたしております。

  経産省といたしましても、今後とも、日本弁理士会を含む関係団体と協力の下、中小企業の知財活用に対する支援に全力で取り組んでいく考えでございます。

○小林温君

 もちろん特許庁、経産省がいろんな形で事業を展開していただく、そこに弁理士会始め民間の皆さんの力もしっかりといただいていくということが大事だろうというふうに思います。よろしくお願いします。

  ここから今回の弁理士法の質問をさせていただきたいと思いますが、一つは、弁理士の研修制度の見直しについてでございます。

  平成十二年の法改正の際には弁理士試験制度を抜本的に改革し、若く有為な人材の参入を促進をしようということがございました。弁理士の数も、平成十二年四千五百人だったものが、現在は七千人まで増えているわけでございます。一方で、弁理士を使われるユーザーの方々にとっては数が増えれば本当にいいのかというところもあるわけでございまして、数を増やすと同時に、個々の弁理士の資質をしっかり担保するということこそが重要であると私は思います。

  したがって、今回の法改正の中では、従来のそのような弁理士の量的拡大路線は踏襲はしつつも、新人弁理士に対する実務修習制度の導入と、既に資格を持たれている弁理士に対する定期的な研修の義務化によって弁理士の質的な充実も図っていくということが一つの柱になっているわけでございます。これは、弁理士法に限らず、近年、他の士業も含めて資格制度全体の社会的な信頼の醸成が求められている中で本当に必要なことでありますし、弁理士だけではなくて、弁理士、ユーザーの双方にとって非常に良い方向性だと私は思います。

  今回の法案では、ユーザーのニーズに対応する形で弁理士業務の範囲の拡大も措置をしております。知財の専門家として位置付けられた弁理士に必要な能力はますますこれは高度化をしておりますし多様化もしている、その十分な能力担保措置が図られるようにこの実務修習や定期的研修をしっかりと形をつくっていくべきだというふうに思います。

  そこで、今回導入されるこの実務修習、それから定期的研修の具体的な内容、今の時点でお聞かせをいただきたいと思います。

○政府参考人(中嶋誠君)

 研修制度の内容についてのお尋ねでございます。

  二つの研修について法律上義務付けを考えております。一つは、弁理士となる資格を有する方々に対する実務研修、実務修習でございますけれども、これは、弁理士に登録の前に、弁理士となるのに必要な技術的能力あるいはその実践的な業務遂行能力を修得させることを目的としております。

  したがいまして、その具体的な内容といたしましては、実務経験七年以上の弁理士を講師といたしまして、例えば明細書の作成といったような実務、あるいは弁理士としての倫理といったようなものについて、これはあくまでもまだ案の段階ですけれども、例えば三か月程度の期間で六十時間から七十時間程度の修習を座学の教育あるいはe―ラーニングの活用などによって行うことを想定しております。これ、多分お勤めの方も大勢いらっしゃると思いますので、そういう方々の受講の便宜も考えていろいろ工夫をしたいと思っております。

  それから、第二のタイプは、既に弁理士になられた方に対して定期的な研修を行うものでございまして、これは知的財産権をめぐり最新の状況を常に的確に把握をしていただく、法律とか条約とかいろいろ時代の変化に対応して多様で高度な能力を常に修得して維持するということを目的としております。

  したがいまして、その具体的な内容といたしましては、最新の知的財産制度の改正状況あるいはその技術的動向などについて、これもあくまでもまだ案の段階ですけれども、例えば五年間で七十時間程度の研修を、これも座学教育あるいはe―ラーニングを活用して行うことを想定しております。

  今後、この実務修習あるいは定期的研修の詳細な内容につきましては、関係者とも御相談をしながら省令で定めたいと思っております。

○小林温君

 具体的にはこれから詰めていく部分もあるのかというふうに思いますが、その量を増やした結果、質が悪くなったということが決してないように、そうした今回の修習、研修というものの中身についてはしっかりと充実を図っていただきたいということをお願いをしておきたいと思います。

  そこで、二十一世紀に入って知財立国、知恵の時代という言葉が言われて久しいわけでございますが、やはりこの知財の制度あるいは知財戦略というものは、我が国が資源もない中で引き続き強靱な産業競争力を維持して、持続的で安定した経済成長を実現していくためには極めて重要だというふうに思います。

  経産省では、GDPを経済成長の数字として使う以外に、GNIという数値も最近は提唱しているわけでございます。これは正に、その一つの側面は知財の収入で経済成長を数字的にとらえていこうということでもありますので、そこに我が国の成長のかぎがあるわけでございます。我が国のこれまでの産業の強みでもあった、あるいは今後の経済成長の核にもなるであろうその知的財産を守りはぐくむ弁理士業については、国際化も進展をしておりますし、世界的にも知的財産というものが重要だという意識が向上している中で、以前にも増してこれは重要な仕事になっている、これからも更に重要になっていくだろうというふうに私は考えております。

  環境変化が極めて速い分野でもございますので、今回、平成十二年に全面改正された弁理士法についての改正でもございますが、これ、時代に合わせて不断の見直しを行っていくということが重要だろうというふうに思いますし、技術の内容の高度化、多様化や国際的な特許取得の意識浸透が急速に進んでいる昨今でございますので、今回の法律改正というものはタイムリーであると私は考えております。

  そこで、今回、今お聞きをしたように、研修制度の見直し以外にも、例えば責任の明確化のための懲戒制度の見直しや名義貸し禁止規定の導入、多様なニーズに対応した弁理士業務の拡大や特許業務法人制度の見直しなどを幅広い観点から、これは弁理士さんというよりは弁理士のユーザーの立場に立って、必要と思われる措置が網羅的に盛り込まれた形になっております。これは、政府にとっても知財の政策を遂行する上で弁理士が担う役割が非常に大きくなってきており、それを踏まえた改正内容になっているということだろうというふうに思います。今回の法案に盛り込まれた各種措置が着実に実施されることで弁理士がイノベーションの促進の担い手になるということが明らかにもなったんだろうと思いますので、民間需要主導の持続的な経済成長の中でこの役割が更にしっかりと認識をされるようになるということを私自身も期待をしております。

  最後に、また大臣にお伺いをしたいんですが、知財行政を推進する立場から、その担い手としての弁理士に対する期待、また本法案を通じた弁理士制度の充実強化に向けた決意をお聞かせをいただきたいと思います。

○国務大臣(甘利明君)

 御指摘のとおり、知財自身の中身がどんどん変わってくるというか、新しいものがどんどん追加をされてくるわけであります。金融にかかわる特許とか、あるいはインターネットにかかわる特許とか、従来想定していなかったものがどんどん新分野に対する対応を迫られてくるわけであります。

  あるいは、国内出願もさることながら、企業の国際展開の中で国際出願というところも多くなってくると。そうすると、それを支えていく弁理士も、国際的な感覚をどう身に付けるか、新しい分野に対する知識をどう身に付けていくか、資質を高めていくということが求められているわけであります。量を増やすこともさることながら、質を高めていく、質、量ともに充実をさしていくということが課題でありまして、これにこたえる法案だというふうに思っております。

  企業自身が知財を企業発展の礎として戦略的に活用していく、これは国際競争の激化の中で生き残り戦略の重要な、言わばコアコンピタンスになるわけであります。

  そういうもろもろの点を踏まえて、今回の法改正が日本の知財戦略上極めて重要な役割を果たすというふうに思っておりますし、弁理士業の果たす役割の重要性にかんがみて、その質を高め、時代の変化に対応していく、そのための法改正だと心得ております。

○小林温君

 今大臣からも、環境変化、あるいはその技術の内容の高度化、多様化、国際性等を考えて不断の見直しを行うことが重要であるというお答えをいただきました。例えば、会社を取り巻くいろんな法制度でも現代化というものが進められているわけですが、企業を応援する行政の立場からは、この弁理士法についても、あるいは特許制度全般についても、その時代に合ったタイムリーな環境を提供するということで不断の見直しを進めていただくということが極めて大事だというふうに思います。

  また、大臣からは、弁理士の皆さんに対する大きな期待もお聞きをしたわけでございますが、今回の法案を拝見をさせていただきますと、その期待が込められる形で非常に前向きな法案として私は高く評価していいのではないかと思います。この法律によって弁理士の方々が知財立国の担い手として一層活躍されることを願いまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。