[第166回 参議院 経済産業委員会 2007年3月15日]
○小林温君
おはようございます。自民党小林温でございます。
今日は、我が国のIT政策のグランドデザイン、今後の方向性について、甘利大臣始め経済産業省のお考えを伺いたいというふうに思います。よろしくお願いいたします。
国家、政府、あるいは企業にしても、ITをどう取り入れるかということはもう大きな課題になっているんですが、アナログからデジタルにするという電子化の時代はもう過ぎまして、仕事の中身自体を見直して、そこにITを導入することによって経営革新を行うところが勝ち組になっているというのが国際的に見ても今の流れなんだろうというふうに思います。そう見たときに、我が国のIT政策も、かなり強力なリーダーシップがあって初めてこのIT政策を推進することができるだろうというふうに思います。
その中で、まず一つ目の質問はIT政策を担う組織、体制の在り方についてさせていただきたいというふうに思います。
情報通信省の創設という構想、これはかなり前から見えたり隠れたりしているわけですけれども、安倍総理も、省庁再々編を進める中で、この情報通信省の創設ということにかなり熱心だというお話も聞いております。例えばアジアでも、韓国やシンガポールなどのようにITに関連した行政を一元化した組織で進め、かなりの成果を上げている国もあるわけでございます。
私は、我が国のIT政策の将来像を考える上では、この情報通信省の創設という構想は一つの重要な論点として提起をされるのではないかというふうに思っております。しかし、この議論を進めていく際にやはり必要な視点としては、規制と振興のバランスをいかに取っていくかということが重要になってくると思います。
米国の例を取れば、振興を担当する組織とは別に、FCC、連邦通信委員会という独立した機関が規制にかかわっている例もありますし、その他の国でも規制と振興を分離している例は多々見受けられるわけでございますが、そこで是非、大臣御自身としては、我が国全体のIT行政を進めていく組織及び体制はどうあるべきかということについて御意見をいただければと思います。
○国務大臣(甘利明君)
御指摘のとおり、情報通信省というこの構想は、一つの問題提起ではあると私も受け止めております。そこで大事なのは、安倍内閣でも、イノベーションの創造とか、あるいは国際競争力を強化するというこの視点が大事と主張しているわけでありますから、まず、どういう機能が必要でどういう機能を集約させることが大事かという機能論から入って組織を考えるというたどり着き方が正しい在り方だというふうに思っております。おっしゃいますように、規制と振興、この考え方をよく整理することが大事だと思っております。
例えば、規制と振興を一つに取りまとめちゃったという形は発展途上国にはよくある形式なんでありますけれども、それが先進国になっていきますと、振興は振興でまとめて、規制は規制の官庁とか委員会とかいうことで担当しているわけでありまして、今アメリカの例を引用されました。アメリカでは、おっしゃるとおり、規制と振興を分ける形で行政組織が編成されていると。この辺の、つまりスタートからあらまほしき姿に向かうという形態が国際社会の中でどういうふうに形成されているかということを検証しながら日本の進むべき道を見いだしていくということがいいんだと思います。
その点で大事な視点は、おっしゃるように、振興と規制を分離するという視点が極めて大事だと思っております。規制官庁に振興をさせるということは、やっぱり規制をされる方としては、顔色を見ながらですから言いたいこともなかなか言えないと。情報通信の世界は、いかに自由濶達にその能力を伸ばしていくかというところが極めて大事でありますから、怒られちゃうところに向かってこういうのをやってくれという、恐る恐るということでない方が私はいいんではないかというふうに思っております。そういう視点で情報通信省構想を私自身はとらえております。
○小林温君
規制と振興のバランスということ、それから機能論をまず整理すべきだというお話もいただいたわけでございます。
今大臣のお話にもありましたように、ある分野においては、やはり日本の規制が過剰過ぎて競争力を阻害している部分もあると思いますし、一方で、国際標準化へ乗り遅れた結果、なかなか日本の産業が育たないという分野もこのITの分野の中ではあるのではないかと私は常々思っているわけでございます。
そこで、経済産業省は振興行政を現在も担っておられるわけですが、IT産業の生産性を向上させると、ひいては、後ほどまた議論させていただきたいと思いますが、我が国の競争力を高めて、いわゆるイノベーションを大きく現実のものとしていく上でこれまでも、あるいはこれからも極めて重要な機能を担っていただかなければいけないというふうに思います。
そこで、今後IT産業の振興を考える際に、あるいは国家としてのIT化というものを進めていく上で経産省に求められている役割というものはどういうものだという御認識をお持ちでしょうか。
○副大臣(山本幸三君)
御指摘のようにIT産業、大変重要でございまして、今我が国の国内総生産額の約六十兆円、約二百八十万人の雇用を支えておる基幹産業でございます。しかし、欧米のみならず、アジア勢との厳しい競争にも直面しているわけでありまして、そういう意味で、我が国の将来を支えるIT産業の発展を図るためにその国際競争力を強化する取組を積極的に進めていく必要があると考えておりまして、具体的には、例えば海外とのイコールフッティングを確保するための国内の設備投資の環境整備、あるいは研究開発支援、技術流出防止を始めとする知的財産の保護等の取組の推進を図る。あるいは、グローバル市場の開拓のために、EPAやWTOを通じた戦略的な通商政策の推進、そして省エネルギーの実現、製品安全の確保等に対する産業界の取組の支援、こうしたことを経済産業省として積極的に取り組んでいるところでございます。
また、ITの活用は特定の産業にとどまらず、製造業やサービス産業など幅広いユーザー産業の競争力の強化、あるいは生産性の向上に資するものでございます。こうした観点から、我が国企業九九%以上を占める中小企業に是非ITを活用していただいて、そして生産性を上げていただく。産業競争力強化のための、そのための税制、情報基盤強化税制等ございますけれども、そうした税制の活用も促進をしているところでございます。
そうした意味で、今後ともIT産業とユーザー産業の一体としての産業競争力の強化に向けて、積極的に取り組んでまいりたいと思っておるところでございます。
○小林温君
ありがとうございます。
六十兆円、二百八十万人という数字がございましたが、まあこれはまだまだ小さい数字だと思いますし、今後の我が国の経済力、国際競争力の核としてやはりこの数字を更に大きく伸ばしていく必要があるんではないかというふうに私は思います。
次の質問は、国民生活におけるITの利活用と経済成長という観点から質問させていただきたいと思うんですが、昨年、自民党でシンクタンク二〇〇五というのをつくったんですが、その中で、ノーベル経済学賞の受賞者であるクラインさんというペンシルバニア大学の教授をお招きして、日本経済の三%成長への経済政策という研究を行っていただきました。
生産性向上のためのIT政策に焦点を当てたものだったわけですが、この結果は、我が国経済の潜在成長率は、いろんな実証分析によって少なくとも三%はあると。そして、その潜在成長率を現実のものとしていくためには、我が国において社会としてITの効用をいかに受け入れて活用していくかが課題であるというふうに提言がなされたわけでございます。アメリカの例でまた恐縮ですが、例えば国民全員が持っているソーシャル・セキュリティー・ナンバー、社会保障番号、あるいはクレジットカードを使うことのアレルギーを取っ払って、いろんなことを現金を使わずに行う、あるいは電子政府の推進によっていろんな公と民間とのやり取りを電子化する、そういうIT革新によって経済への影響を更に大きくするような環境整備が必要だということがその中で提案をされているわけでございます。
こういうことも含めて、ITというものを国民生活、社会生活全体で受け入れていくということ、こういう観点から、経済産業省としてはどのような取組を行われていますでしょうか。
○副大臣(山本幸三君)
正に御指摘のとおり、ITを活用して生産性を上げていくということがこれからの日本経済の成長を支える重要なポイントになると思います。アメリカでは、正にIT革命で生産性が大変向上いたしました。アメリカと比較いたしますと、我が国はITの投資と生産性向上の相関係数が低くて、特にサービス産業において低いわけでありまして、サービス産業、非製造業において低いわけでありまして、この辺をいかに高めていくかがこれからの勝負だというように思っております。
そういう意味で、政府全体としては、総理を本部長とする内閣のIT戦略本部がございまして、これを経済産業大臣、副本部長としてしっかりと支えて、関係省庁、多くの省庁の施策と密接に連携をしながらITの活用を進めていきたいというように思っておりますし、あるいは貿易管理あるいは特許申請等に係るそうした電子政府システムの構築等も進めているところでございます。
それから、特に中小企業あるいはサービス産業に活用していただかなきゃなりませんので、各地域に、ITの専門家に委嘱をいたしましてIT経営応援隊というのをつくっております。こうした方々にいろんな経営者の研修をやっていただいたり、あるいはIT経営百選を認定するというようなことで、そうしたベストプラクティスの収集、普及を図っているところであります。
それからまた、ITの民間事業者でITキャラバン隊というのを組織いたしておりまして、このIT経営応援隊と一緒になりまして今全国を回って、ITを使うとどういうふうに経営の効率化図れますよというようなことを普及しているところであります。私自身もこれまでに二回、そのITキャラバン隊、経営応援隊の研修に参加させていただいて、今年一年かけて約二百か所、IT経営キャラバン隊は全国回るということでありますので、是非また先生方の応援をいただきたいなと思っているところであります。
○小林温君
ありがとうございます。
ゆっくりとした経済成長が続いているわけですが、この一つの要因としては、IT産業が経済全体に占めるシェアを拡大してきたということがあるというふうに思います。これ六十兆円、二百八十万人という数字でございましたが、一方で先進国、例えば米国なんかと比べると、ユーザーとしてITを活用する企業、産業側に、ITを経営革新や生産性向上のツールとして十分に生かし切っていないんではないかという分析もあるわけでございます。
例えば、アメリカの有名なディスカウントストアのウォルマートは、電子タグを用いて流通の効率化を図って収益性を向上させたというふうに言われているんですが、これはのみならず、小売業の生産性向上自体が、このウォルマートの先端的なIT活用事例が他社に広まった結果だというふうにも言われているわけでございます。先ほど申し上げたように、我が国の企業はITを活用してのイノベーションがまだまだ途上にあるというのが事実だろうと思いますし、これは反面、今後、経済全体の生産性の押し上げ効果がこの部分の政策が効いてくれば期待をできるということだと思います。
そこで、企業の生産性を向上させていく上で、ITの活用についてどのような取組が必要だというふうにお考えでしょうか。
○国務大臣(甘利明君)
御指摘のとおり、ITはそれ自体が産業としての無限のポテンシャルがあるんですね。それと同時に、ITがそれ以外の分野の革命を起こすということなんです。ですから、IT革命というのは、自身が産業として大変なポテンシャルがあるということと、それからそれを使って既存の産業が革新的になっていくという、この両方の相乗効果があるんだと思います。
今、ウォルマートの話がありました。電子タグという言葉が出始めたころ、数年前、私は直感的に、この電子タグというのは経済社会の新しいインフラになるぞと、これに積極的に介入しろということを相当きつく私は言いました。というのは、ある意味、サッカーでいえばピッチですから、アウエーになるかホームになるか、この違いは大きいから、電子タグというのを日本のホームとせよということで、積極的にその規格等の問題で介入していけということを強く主張した次第であります。
今ITは、なかなか日本では部門の壁にとどまって企業内で共通したプラットホームになっていないと言われます。アメリカを委員は引き合いに出されましたけれども、アメリカは部門の壁どころか企業間で、企業の壁を越えて言わば共通のインフラになっているわけです。これをどうやって達成するかということが課題でありまして、そういうことを積極的に今指揮を取っているところであります。
特に、電子タグは商売を効率的にする、確かに流通に革命が起きます、電子タグを導入すれば、ウォルマートはそれ既にやっていますけれども。それだけじゃなくて、企業間、企業の壁を越えてどういう情報をこれに持たせるかということを仕組んでいって、そうすると、製品安全とか含有する化学物質の管理とか省エネとか、あるいはリサイクルにまで電子タグは全部活用できるわけですね。ですから、経済社会に革命が起きるというぐらいの大変なことになるわけであります。
ですから、スタンダード、プラットホームをどうしていくかということに対しては、どんどん積極的に日本がリーダーシップを取っていくべきだと思っております。
○小林温君
ありがとうございました。