[第162回 参議院 法務委員会、財政金融委員会、経済産業委員会連合審査会 2005年6月9日]
○小林温君
経済産業委員会の小林温でございます。
急に委員会が入りましたので、こういうときは田村耕太郎さんや私のような馬力のある人間が質問しろということだと思います。さわやかにやらせていただきたいと思いますが。
今日は会社法の議論でございますが、我々経済産業委員会では、今会期中に有限責任事業組合法についても議論をさせていただいて、成立をさせていただきました。基本的にこうした新しい会社法の整備というものは、私は、できればこれから起業されようとしている皆さんに、その設立あるいは会社を大きくしていく過程で使いやすい、そういう制度にしていくべきだというふうに思っております。今日は大臣も四名おいででございますので、経産委員会の中での議論も含めて、また改めてさせていただきたいというふうに思います。
四名の大臣の中で、伊藤達也大臣はかつてピザ屋さんを経営をされておりました。御自身で会社を設立をされた経験があるわけでございますが、私も五つぐらいの会社を実は自身で立ち上げた経験がございます。どれだけ会社をつくることが大変かということが、例えば関係省庁の皆さんあるいは大臣方が御認識をいただいているかということで少し紹介をさせていただきたいんですが、例えば最低資本金が撤廃されて一円起業が可能になったわけですが、今、今後起業を行おうと思った場合には、埼玉県のあそこの副都心にある出先に行かなければいけないそうでございます。それから、定款を作って公証役場に行きます。公証役場で定款が承認をされますと、銀行に行って保管証明を出してもらいます。それから、法務局に行って会社が設立をされるわけでございますが、その後、県と区役所と税務署にこの税制上の取扱いについての申請に行って、それから社会保険事務所にも行かなければならない。
大体、手数料、行政書士さんなんかに頼んだ場合の手数料を引いて、実際に掛かる金額が三十万円以上やっぱり掛かるわけでございますね。手間も、これ、例えば一人で起業しようとして自分のビジネスモデルをいろいろ考えたり、あるいはその取引先を開拓しようと思っている起業家の立場からしたら、これだけの作業を、しかも物理的に電車に乗ったりいろんなところに行ってしなければならないというのは大変なことだということでございます。
電子政府の取組の中ででも、会社設立におけるワンストップサービスということについて関係省庁で議論をしていただいているというふうにも思いますが、私の立場からすると、まだ遅々として現実的に利用者にとって使いやすいような制度にはなり得ていないというのが率直な感想でございます。是非、あわせて、こうした取組について、今日は四大臣おいででございますので、更なる力を入れていただきたいというふうにお願いを申し上げます。
そこで、この会社法制の現代化でございますが、現実的には小規模な会社では商法の規制が形骸化している。これを、ギャップを埋めていこうというのが一つのねらいだろうというふうに思います。例えば、株式の原則不発行というものも実際には中小企業の現状を追認しているわけでございまして、これも実は株券というのを印刷しようと思うと専門の印刷屋さんに頼んでかなりの金額が実は掛かるわけでございまして、零細中小企業というのは、実は株券印刷することすら実はままならないのが今までの現状でございました。それから、その払込み保管証明書を残高証明書で代えてもいいということも、これも起業の実態に実際は合っているんだろうというふうに思うわけでございます。
そこで、まず一つ目の質問でございますが、今回の会社法では、社員が有限責任を負う会社形態として、株式会社と合同会社という二つの選択肢を提示しております。起業しようとする立場から見た場合に、どの点に着目してこの二つの会社形態を選択することになるのか、法務省さんに御見解を伺いたいと思います。
○政府参考人(寺田逸郎君)
今回の会社法の改正におきましては、従前の有限会社を株式会社に統合いたしまして、有限責任の会社というのをそういう意味での一本化を図ったわけであります。
ただ、他方、現実の会社の形態が様々議論される中で、外国にもございます、その会社の法人としての、外側から見ますとこれは一つの会社形態を成しているけれども、しかし内部の規律からいうと組合とほとんど変わりがないというものもある、またその必要もあるということでございますので、そこで合同会社、略してLLCと言われたりすることもございますが、そういうものを今回新たに提示しているわけでございます。
そこで、委員のどういう使い分けがされるかという御質問でございますけれども、中身の点からいいますと、この業務執行につきまして、株式会社の方は当然執行機関というのを予定しているわけでございます。これは一般の株主と執行機関との分離というのがこの株式会社の典型的なありようでございまして、したがいまして、株主等取締りとは別の取締役という機関が設けられるというわけでございます。これに対しまして、先ほど申しましたように、合同会社においては、社員自らがこの執行を行うというものを予定しているところでございます。
もう一つは、これはまあ閉鎖的な会社に特徴的に見られるわけでございますけれども、持分の譲渡において、株式会社は原則自由でございますけれども、合同会社は他の社員の同意が必要という、非常に個人的な色彩が強い会社になるわけでございます。同様に、定款の変更についても株式会社は多数決でございますが、合同会社は全員一致ということになります。出資の払戻しにつきましても、定款で自由に定められるという合同会社の特徴がございます。
これらの違いによりまして、株式会社というのは基本的に非常に多くの方々から出資を求めてそれで事業を行う形態、これに対しまして合同会社というのは特定で、ある程度人数に限りがある、そういう方々が仲間内で会社をおつくりになる、資金をお出しになる、こういうケースを念頭に置いてつくられているところでございます。この中でそれぞれ適切な御選択をされるということを私どもは望んでいるわけでございます。
○小林温君
幾つかの観点から、二つの会社形態の選択についてお答えをいただきました。
今のお答えをお聞きすると、合同会社の方が比較的アーリーステージにおいては活用しやすい会社の形態だということだろうと思います。起業家の立場から見た場合には、その合同会社という設立形態が存在することによって、選ぶ組織の選択肢も拡大するということだろうと思います。
そこで、まあ最初は合同会社を設立したという場合を想定して、では仮に、これが例えば今のお話でいいますと、広く資金を募ることが必要だというようなことになった場合に、例えばどういう段階でこの株式会社に組織変更をするような状況を想定されておるんでしょうか。まず法務省さんから。
○政府参考人(寺田逸郎君)
これは、まあ先ほど申し上げましたことを敷衍して申し上げるということになるわけでございますけれども、結局のところ、合同会社の限界というのは、非常に多くの方々から資本を得たいということについて限界がある。つまり、ただ自分はお金だけを出すということについて、合同会社という形態は余りフィットしていないということになるわけでございます。
したがって、いったん合同会社をおつくりになった後に、出資者の投下資本というのを容易に回収したい、つまりだれでも資本を出せるような、そういうタイプの会社にしたい。それで、出資者を広く募って、経営というのは経営の専門家にゆだねたいと、こういうような段階になりますと、この合同会社から株式会社への組織変更というのが具体的に考えられることになるのではなかろうかというように考えております。
○小林温君
まあ、スタートアップ時とその会社の成長のステージに合わせて適した組織も変わるということだろうと思いますが、今の同じ質問について、経済産業省さんではどういうふうにお考えでしょうか。
○政府参考人(寺坂信昭君)
御指摘のとおり、有限会社でこの内部自治の徹底いたします合同会社、こういったものが創設されることによりまして事業を始めようとする方のその組織の選択肢が増えることになるわけでございまして、ただいまもございましたように、自らの資金とその能力を持ち寄る共同事業は合同会社が適しておって、外部から大量の資金調達をして事業展開を図る、そういうようなことになります場合には株式会社が適していると考えております。
実際、アメリカにおきましても、このLLC、合同会社で起業家が共同事業を立ち上げまして、それから事業が軌道に乗って、それで株式公開で大量資金を、資金、大量の資金調達を図る、そういうめどが立ちますと、そのLLCからコーポレーション、まあ株式会社でございますけれども、そういったものへの組織変更を図る事例があるというふうに承知をしてございます。
○小林温君
今、アメリカの例も引いていただきましたが、仮に合同会社からLLCに会社の形態が変わるという、こういうときにも、その手続の部分については極めてできるだけ簡略にしていただきたいというふうに思います。
先ほど申し上げましたLLPの制度について、経済産業委員会で議論をさせていただきました。その中でも、私、議論をさせていただいたんですが、同じ会期中に似たような法案が別の委員会で議論をされているということ、特に起業家の観点から見た場合には極めてこれはどういう選択をしたらいいか分かりにくいんじゃないかということを指摘を申し上げたわけでございますが、一つには税制の問題が存在をしているということでございました。
アメリカのLLCにおいては、いわゆるチェック・ザ・ボックスの制度を導入をして、構成員課税と法人課税の選択制によって一つの制度で対応をしているわけですが、今回、LLCとLLPと極めて似通った制度、構成員が違うというところで法人と組合だというところはあるわけでございますが、がこうして提案をされた。経緯についてはお伺いをいたしませんけれども、このチェック・ザ・ボックス規制の導入については、改めて財務省はどういう御見解かということをお伺いしたいと思います。
○政府参考人(佐々木豊成君)
委員よく既に御存じのことかと存じますけれども、改めまして申し上げますと、米国もLLCにつきまして構成員課税との選択が可能になっているということは誠に事実でございますが、アメリカではそもそもLLCに限りませんで、法人一般に広くその法人課税か構成員課税かの選択が認められているということでございます。
その背景といたしましては、アメリカにおきましては連邦レベルの統一的な会社法制というのは存在しませんで、各州が独自に多様な事業体を創設できるような会社法を作っているということでございます。その中で、課税当局がその課税、多様な事業体を法人課税にするのか事業体課税にするのかというその切り分けの基準というものを歴史的に何回か作ってまいりましたけれども、とてもその基準がまた変えられる、抜けられるということで形骸化してきたという、そういう事情がございます。こうした事情を抜きにして比較を行うというのはなかなか難しいのではないかと存じます。
また、アメリカにおきますその法人課税と構成員課税の選択、この選択制、チェック・ザ・ボックスという制度につきましては、国際的に見ますと租税回避を招きやすいんではないかという指摘もなされておりまして、これを我が国の税制で採用するということにつきましては、課税の公平あるいは円滑な執行の確保の観点から問題がかなりあるということに十分留意する必要があるのではないかと考えております。こうした状況の下で、合同会社制度の課税関係につきましては、我が国税制の基本的な考え方にのっとりつつ、他の会社形態とのバランスなどを十分に踏まえて、その法的な位置付けに沿って適切、適正な課税関係を構築していくことが適当ではないかと考えております。
○小林温君
アメリカとは事情が違うというお答えでございます。この会社法の見直し自体が、例えば有限会社、株式会社を一つにしていくということも含めて、先ほど来申し上げているように、起業をする側から見た場合に選択肢のバリエーションは広げるけれども、ある意味では起業の際に分かりやすいその会社形態を提案をしていくということだろうというふうに私は理解するわけでございますが、どうもこのLLPとLLCについては、私自身が起業家の立場に立った場合には極めて分かりにくいというのもまた現実だろうと思います。
そこで、私はこれは経済産業委員会でも中川大臣にもお願いを申し上げましたが、将来的にこの二つの制度を統一して、その課税方式については構成員課税と法人課税の選択を認めていくべきだというふうに思っておりますが、この点について谷垣大臣の御見解をいただければと思います。
○国務大臣(谷垣禎一君)
私も今日、委員会に出てまいりまして、にわか勉強で余り的確なことを申し上げられるのかどうか分かりませんが、やはり大陸法と英米法の物の考え方の違いというのが背景にあって、なかなか難しい問題だなというふうに思います。
そこで、税法をどうしていくかという観点に立ちますと、やはり事業体の収益と費用というものがどこに帰属していくか、その帰属していく実質を備えたものに課税をしていくというのがやはり税の関係では基本的な考え方だろうと思うんですね。
それで、有限責任事業組合については平成十七年度税制改正で構成員課税の仕組みを取ったわけですが、合同会社制度については確かに分かりにくいとおっしゃるんですが、やはり有限責任事業組合制度とは私法上別個の特徴のあるものとしてつくられたんだろうと思います。
したがって、今後利用者はそれぞれの制度の特徴を見ながら選択をされていくと。私どもとしては、やはりどういう利用形態になっていくのかというのをよく見極めなければならないと思いますが、その上で制度的に対応が必要であれば対応していかなければならないことだというふうに考えております。
○小林温君
決してその税がハードルになることがないように重ねてお願いをしたいと思います。
そこで、今回は株式会社と有限会社がある意味でいうと統合されます。それから、LLCそしてLLPの創設ということが同時期に起こるわけですが、例えばベンチャー企業の経営者にとって自らのビジネスモデルに則してどういう会社形態を選択をしていくのがいいかということについて、しっかりとこれは認識をしていただくように周知徹底していくことが私は必要だろうというふうに思います。その点について、関係省庁力を合わせていただいて分かりやすい説明をお願いしたいと思いますが、この点について法務省の御見解をいただきたいと思います。
○国務大臣(南野知惠子君)
先生御指摘のとおり、会社法案の内容についてやはり周知徹底を図ることは非常に重要であろうかというふうに思っております。法務省では、従前より法律の内容の広報活動につきましてはホームページの掲載、又はポスター、パンフレット等の印刷物の配布、又は立案担当者による各種雑誌への解説記事の執筆、これも大いに利用されているところでございます。主要都市での説明会の開催等を行うことを通じまして、その周知徹底を図ってまいりました。
会社法案につきましても、このような様々な施策を講じまして、その内容の周知徹底に遺漏のないようにやってまいりたいと思っております。
○小林温君
中川大臣にも同様の質問をと思ったんですが、時間もございません。また経済産業委員会でお願いをするとして、やはりこういう新しい法律を整備をさせていただいて、それを利用される方々がその法律の改正の意図というものをしっかりと認識できるように、今までの周知のルートとは違った形で新しい考え方で、起業をされる皆さんにもアプローチをできるような取組を是非関係当局にお願いを申し上げまして、本日の質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。