[第162回 参議院 国際問題に関する調査会 2005年2月21日]
○小林温君
自民党の小林温でございます。お二人の参考人には大変貴重なお話、ありがとうございました。
もう既に論点として出ている部分で、重なるかもしれませんが、米英関係並みの日米関係という先ほど文脈がございました。その中で、我が国と北朝鮮との関係、中国との関係についてそれぞれお伺いをさせていただきたいというふうに思います。
まず小此木先生にでございますが、外交課題を解決する、その上で日本外交を推進する。まあ今その環境が特に対北朝鮮問題においてどうなっているかというところを考えてみますと、これは今回のシリーズで我々ずっと日中関係について議論させていただいているんですが、まあかなり日中関係は悪いと。それから、ロシアとの関係も領土問題をめぐって、本来であれば大統領が来る来ないという話も延期をされていると。それから、実は日韓関係は非常に良くなっているという見方があるわけですが、対北との関係においては韓国の政府あるいは国民の対北に対する感情が我が国よりも先に行ってしまっていて、我が国の北朝鮮政策について言うと決してプラスの方向では動いていないと。そういう状況があるだろう。
九・一一あるいはイラクとの関係の中で日米間にはかつてないほどの信頼関係が生まれてきたというふうに言われております。そういう意味において、やはり日米の関係をこの対北朝鮮問題の解決でどうてこに使っていくかということが我々に一つ大事なことなんだろうというふうに思います。
ただし、先ほど来、両先生からお話がありますように、必ずしも日本と米国はこの対北朝鮮政策については、まあ同じ環境を共有していない。それは、核問題と拉致問題というその二つの違った視点があると。それから、どうもやはりアメリカも、イラクがある、あるいは距離的な部分も、アメリカと朝鮮半島との距離的な部分も含めて、少しやはり長期的にこの問題を見ているんじゃないかというふうな気もするわけでございます。
そんな中で、朝鮮、北朝鮮の核保有と六か国協議の不参加の表明を受けて、実は米中韓の三か国協議が先週行われたわけです。かつて日本側からすると、この六者協議の中で、日中韓のトライラテラルの関係をベースにこの問題を解決していこうということがあったわけでございますが、先ほど来申し上げているように、なかなか日中韓というのも、実はこの対北朝鮮については機能しなくなってきている部分があるのじゃないかというふうに思うわけでございまして、北朝鮮も実はそれを見越して、日本に対して遺骨問題に見られるような対応、あるいは強い態度で臨んでいるということもあるかもしれません。
先生、お時間がなくて制裁の議論の部分については余り触れられなかったので、あえてそこについてお聞きをしたいと思うんですが、マスコミが多分にミスリードしているということを私も同意をさせていただきたいと思います。
その中で、アメリカがむちの役割を果たして日本があめの役割を小泉外交の中で果たしてきたということが機能した部分もあるということを先生お書きになられていますけれども、私は、もう既にアメリカにもしかするとむちの役割を期待するのが限界に来ているんじゃないかと。だとすると、拉致という、これは日本固有といえば固有の問題であるわけですが、国民的に非常に大きなイシューになっているということを考えると、日本がむちの役割を果たし、それにアメリカに補完的な役割を果たしていただくという、正に主体性も問われているのが今の状況なんじゃないかと思います。
私もかつて北朝鮮問題について少し学者的な立場から研究をさせていただいておりました。先生のここでの分析、全くそのとおりだと思うんですが、政治にかかわる立場の人間としては、経済制裁、決して一〇〇%の目的を達成できないにしても、国としての威信を示す必要というのもあるのかなということを立場が変わった中で今私感じているわけですが、そういうことも踏まえた上で、もう一度制裁について、今の制裁論議が日本の中で高まっているということについて、先生の御見解をお伺いできればというふうに思います。
それから、高木先生でございますが、中国、日中関係について議論をさせていただいて、私、実は先日ある参考人の方に日米安保というものは中国はどういうふうに見ているんだという質問をさせていただきましたら、中国は今まで公式的に日米安保の存在を否定したり批判的な見解をしたことはないという実は答えが返ってきたんです。それはいろんなとらえ方あるかと思いますが、ただ、今回、2プラス2で初めて台湾海峡の問題に日米が一緒にコミットをするという、ある意味でいうと新しい一歩を踏み出したわけでございます。これは、最初に申し上げた米英関係並みの日米同盟という文脈からいくと、今の時期にこういうことが出てくるのは仕方がないことなのかなというふうに思うわけですが、この部分を含めて、この台湾海峡有事への言及がどういう影響を日中関係にもたらすのかと。
それから、今日は議論の中でそれほどまだ出ていないかと思うんですが、今後、特に日米の同盟が、軍事的な同盟が日中関係の中でどういうふうに取り扱われていくのかということについて御見解を伺えればと思います。
○参考人(小此木政夫君)
北朝鮮に対する政策というのは非常に難しいんですが、制裁論についてどう考えているかという御質問でございました。
これは、何もしないということはあり得ないんですね。私は、先ほど申し上げたように、大きな枠で見た場合に日本は北朝鮮との関係を正常化しないというむちをずっと振るってきたんだというふうに申し上げましたけれども、しかし、それでは今回のような事件に関して何もしないということはあり得るのかといえば、それはやっぱりあり得ないと思うんです。
小林先生御承知のように、通常こういう外交的な論議になりますと、最大取り得る措置というのは国交断絶なんですが、国交断絶するも何も、国交がないわけですから、それができない。となると、やはりやられたことに関してその程度のしっぺ返しをやっていくというやり方、ティット・フォー・タッツというふうに英語では言うんでありますが、しっぺ返しとか目には目をというような翻訳がされています。簡単に言えば、ある種の調教を行うわけですね。悪いことをしたらそれに対して同じぐらいのしっぺを返す。また悪いことしたら、また同じようなことを、しっぺを返していく。しかし、いいことをしたらそれに対しては褒美をやるということによって相手の行動をこちらに望ましい方向で変えていくという、そういうやり方であります。私は、今の事態、外交的ないろんな観点というものもございますが、それはやっぱりやらなきゃいけないだろうと思って見ております。
それから、核問題に関して北朝鮮が六か国協議に出てこない、あるいは出てきても問題は一向に解決されないということになれば、やはり制裁は必要だというふうに思います。その真ん中の、いわゆる拉致問題に関して経済制裁をすべきだという議論は、これは気持ちとしては非常によく分かるんですが、技術的にかなり難しい部分があって、余り僕は積極的に賛成していないんであります。
つまり、周りの国が六か国協議をやろうといってまだ頑張っているときに、日本が制裁を始めちゃっていいものだろうか。最も重要な中国や韓国との関係も、結局そこで破綻してしまったら肝心なときにどうするのかとか、あるいはやっぱりそのカード、経済制裁というカードはやっぱりもうちょっと重要な局面で使うべきであって、こんなに早い段階でやっちゃったら日本のカードはなくなっちゃうんじゃないかとか、いろんなくだらないことをやっぱり考えてしまうわけです。あるいは、巷間言われていることは、十人の人をともかく奪回するために経済制裁をやるんだと、全面的な制裁をやるんだということになると、そうすると、やった後、目的が達成されなかったらどうするのかというようなこともやっぱり考えてしまう。さらに、日本と北朝鮮が一対一でそういう形で向かい合うというようなことは我々にとって賢明なのかどうかというようなことも考えますから、どうも単独で今直ちにということを拉致問題に関して行うことに関しては、私はちょっと消極的だというふうに申し上げたいと思うんです。
ただ、先ほど申し上げたようなしっぺ返しとか核問題での経済制裁というものと併せて我々は三つぐらいのカテゴリーを持っていて、それにめり張りを付けてやっていかなきゃいけないんだということは常に意識していなければいけないというふうに思います。
○参考人(高木誠一郎君)
ありがとうございます。
日米安保を中国がどう見ているかということなんですが、ここ公式に非難したことがないというのはどういう意味でおっしゃったのかちょっと私は首をかしげざるを得ません。と申しますのは、一九七二年に日中国交正常化するまでは公式に非難したことしかないんで、問題ないなんて言ったこと一度もないわけで、国交正常化後は、あからさまに日米安保条約そのものを全否定するという発言はさすがに影を潜めましたけれども、しかし折に触れてこれに対する警戒感は示しておりますし、特に冷戦終えん後、一九九六年に日米安保共同宣言で安保体制というのが冷戦後も重要なんだということを日米双方で確認したわけですけれども、これについては中国はやはり、冷戦が終わって敵がなくなった、ソ連という敵が消滅したにもかかわらず日米が安保体制を維持しているということは、自分たちを標的にしているんだろうということで非常に警戒感を表明しておりました。
それから、日米防衛協力の指針、ガイドラインが改定されたときも、皆さん当然御存じだと思いますけれども、あの周辺事態の周辺の中に台湾が入るのか入らないのかということで、日本政府の立場というのは、周辺というのは地理的な概念ではないという説明だったものですから、中国としては全然それでは不安は収まらないわけでありまして、非常に懸念を表明していたわけであります。
最近の2プラス2の、あれは何ていいますかね、コミュニケなんでしょうか、記者発表なんでしょうか、これも、原文をきちんとまだ私は読んでおりませんけれども、新聞報道による限り、中国はやはり非常に懸念を表明しておりますし、中国の新聞の論評、特に人民日報のような新聞の論評を見ても非常にけしからぬことだということを言っておりまして、問題がないということはないだろうと思います。
ただ、全体的に見まして非常に興味深いのは、私、昨年の一月に、二人ばかり、韓国と日本の若手の専門家と中国のシンクタンクずっと回って、アメリカのこの地域におけるプレゼンスについて中国はどう考えているかということを聞いて回ったんですが、そこで一様に聞かれたのは、中国にとってはアメリカとの、米中関係が良好である限り、アメリカの存在とか日米安保体制というのは基本的に問題にならないというのが答えでした。
考えてみれば当然といえば当然だと思うんですが、米中関係が非常に緊張してくると、当然、この日米安保体制というのは、アメリカが中国に圧力を掛ける非常に重要なメカニズムの一つになるわけですから、中国としてはこれに対して批判的にならざるを得ないと思うんですね。ただ、中国も、何のかんの言っても結局はアメリカと良好な関係を持たざるを得ない。つまり、アメリカとの関係を壊して今の経済建設路線を歩むことはできないわけですから、徹底的にこれを排除するという立場はどう批判的になっても取りにくいだろうと思います。
それからもう一つ、中国では、これは中国に限られたことではないんですが、日米安保体制があるために日本の軍事力の増大というのがチェックされていると。つまり、瓶のふた論ですね。これはアメリカの人が言い出したことですが、中国もかなりこういう考え方をしておりまして、そういう意味からも日米安保体制というのを全否定はなかなかできないということがございます。
ただ、これにつきましては、先ほどのアーミテージのレポート等でアメリカの方からも日本により積極的な役割を果たすようにという要請があって、それに日本もこたえているところもありますので、中国からすると余り瓶のふたとしても利いてないのかなという疑念がだんだん出てきているというのも現在の状況だと思います。