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国会発言録

[第161回 参議院 経済産業委員会 2004年11月25日]

○小林温君

 おはようございます。自民党の小林温でございます。

  今国会、先輩方、同僚の皆さんに御配慮いただきまして、ずっと質問をさせていただいております。ありがとうございます。

  大臣におかれましては、APECへの御出張、お疲れさまでございました。

  今日も議題になります通商関係につきましては、バイ、マルチ、リージョナル、それぞれ様々な議論の場が設けられ、幾つかの果実もあったのではないかと、こういうふうに認識をさせていただいております。また後ほど御報告をお聞きするということでございますので、よろしくお願いしたいと思います。

  今国会の経済産業委員会での議論は、FTAの法案を一つ成立をさせていただいて、今日はWTOの協定に関する法律について議論をさせていただくわけでございます。日本の今後のやはり通商政策の根幹についてのかかわりのある二法の議論だということでございます。

  そして、今回のこのAD法の法案の相手は、言うまでもなく、日本の最大の貿易相手国である米国でございます。米国は、また後ほど触れさせていただきますが、世界で最も開放的な市場だというふうに言われる反面、その通商制度には保護主義的な側面が見られることもよく指摘されるところでございます。

  そういう中で、先般、ブッシュ大統領が再選をされました。例えば、仮にケリー政権が誕生していたら、アメリカの通商政策は少し保護主義的な方向を向くんじゃないかということも言われていたわけでございますが、ブッシュが再選をされたということで、日本から見た場合、米国の通商政策はこのブッシュの再選ということを受けてどういう形になっていくのか、大臣の御認識をお聞かせいただければと思います。

○国務大臣(中川昭一君)

 おはようございます。

  今の小林委員の御質問でございますが、今回のアメリカ大統領選挙、いろいろと私も、また小林委員も、また委員の先生方も非常に関心を持っていたと思いますけれども、少なくとも、ブッシュ政権が継続をしたということは、基本的に通商政策に関しましては大きな変化はないというふうに私自身思っております。

  ブッシュ大統領が、世界との貿易・経済のより密接な関係を構築しようという今までの姿勢、これは変わらないものというふうに思っております。

  今、小林委員御指摘のように、院の御許可をいただきまして、私、チリのAPEC閣僚会合に出てまいりましたが、アメリカの通商代表のゼーリック大使とも二人でお会いをさせていただきまして率直な意見交換をさせていただきましたが、ゼーリック代表も、今後とも、WTOの一層の作業の促進、あるいはまた二国間に関しましては、いろいろな仮に問題が起こったときには率直に話し合って、WTOのルールあるいはまた二国間の信頼関係に基づいて課題を解決をしていこうという積極的な御発言もございました。全く私も同感でございました。

  そのようなこと等々を総合的に私なりに判断をさせていただきますと、今までの流れというものが大きく変化をすることはない、むしろ、日米の総じて良好な経済関係あるいは貿易関係、個々にはいろいろ、もちろん経済大国同士、隣国同士でございますからあるわけでありますけれども、総じていい関係は引き続き持続していくものというふうに認識をしております。

○小林温君

 是非、APECで得られた様々な結果を今後の通商政策の中に生かしていただきたいというふうにお願いを申し上げます。

  そこで、今回の法案でございますが、衆議院で審議をし、成立をして参議院に送られてきたわけでございます。十一月十九日に、アメリカ議会においては、レームダックセッションの最終日にこの一九一六年アンチダンピング法の廃止条項を含む法案が承認をされたわけでございます。こういう動きについては、日本側からの、今回の法案化も含め、我が方からの働き掛けが影響を持ったということは私は間違いないことだというふうに思うわけでございますが。

  そこで、この法案によって提訴された事案は、資料によりますと過去二十件、そしてそのうちの十件が我が国の企業又はその米国子会社に対して提起をされたものでございます。既に原告が敗訴したり訴えを取り下げたりということで、現時点で存在しているのはゴス・インターナショナルと東京機械製作所の一件だけであるというふうに認識をしているわけでございますが、そういうことになりますと、今回の法案というのはこの一事案のために法案を成立させるというふうな認識でいいんでしょうか。

○政府参考人(北村俊昭君)

 お答え申し上げます。

  小林先生御指摘のように、米国議会におきましては、去る十九日、十一月十九日にこの一九一六年アンチダンピング法を含む関税一括法案が成立をいたしております。ただ、この法案が議会で成立はいたしておりますけれども、法案、廃止法が成立するあるいはこの一九一六年法がきちっと廃止をされるには、まずこの法案が大統領に送られ、提出をされて大統領が署名をすると、大統領が署名をしてそこで廃止法案が有効になると、そういった手続がございます。現時点で、したがいまして、観念的、理論的には、現在は、今、いまだに大統領が署名をしているという情報には、私ども確認をしておりませんので、理屈の上ではありますけれども、ある種駆け込み的に、この法案がぎりぎり有効な間をねらって駆け込み的な訴訟が提起されるといった可能性は理論的には否定できないというふうに思います。

  それから、仮に現時点で、小林先生御指摘のように、東京機械、ゴス社と東京機械の案件だけであると、結局それだけであったという場合であっても、これは現在、アイオワ州の連邦地裁の判決で四十億円という巨額の賠償命令を受けております。これを当然不服として同社は連邦控訴審、第二審に今訴えているということでございます。そういう意味では、これが不幸なことに控訴審あるいは最高裁といったところで判決が同社の敗訴という形で確定した場合には、この四十億円もの巨額の損害を回復する手だてとしてこの法案が是非とも必要であるというふうに考えております。

  もう一点追加をさしていただきますと、この法案の意義でございますけれども、やはりこういったWTOの協定に反する法律の効力は認めないと、日本は国際的なルールに従って自由貿易体制を確保すると、そのためのきちっとした毅然とした対応をしていくと、そういう日本の国際社会の中における、あるいは通商秩序の中における日本としての明確な姿勢を示すという意味で大きな意義があるというふうに考えております。

○小林温君

 大統領の署名については、ちょうど感謝祭の週末が掛かっているということで、多分別荘か何かにブッシュ大統領も行かれているんだと思いますが、そこに働き掛けるわけにはいかないかと思いますが、是非、駆け込みでまた余計な事案が発生しないように、是非関係各方面の努力をお願いをしておきたいというふうに思います。

  そこで、本法律案はその六条で、その一九一六年のAD法に基づいて外国の裁判所が行った確定判決の効力を日本において否定する、そういう旨の規定が盛り込まれているわけでございますが、我が国の中でこの外国の判決を否定する旨の立法例というものは今まであったんでしょうか。

○政府参考人(小川恒弘君)

 お答え申し上げます。

  外国裁判所の判決の効力に関する立法例でございますけれども、まず、総論的、一般的な規定といたしましては、民事訴訟法第百十八条がございます。同条によれば、外国裁判所の判決が例えば我が国の公序良俗に反する内容であった場合には、その効力が否定されることになるわけでございます。

  この民事訴訟法第百十八条以外に外国裁判所の判決の効力に関する立法例といたしましては、船舶による油濁損害賠償保障法第十二条というものがございます。これは、我が国が締結いたしました条約に則しまして、外国裁判所が油濁損害の賠償責任の訴えについてした判決につきましては、その判決が詐欺によって取得された場合等にはその効力が否定される旨の規定となっております。

  しかしながら、特定の外国の法律を示し、その法律に基づく判決の効力をすべて否定するという立法例はこれまで我が国においては見当たらず、今御審議いただいている法案が我が国最初の立法例というふうに承知しておるところでございます。

  以上でございます。

○小林温君

 今までなかったような画期的な立法例だということでございます。WTOの協定違反という重大なアメリカ側のある意味では過失に対して、我が国の通商戦略としてこういう立法をしていただくというのは非常に意味のあることだというふうに私は思います。

  そこで、先ほど来お話にあります四十億の損害賠償を東京機械製作所が命じられ、アイオワ州の連邦地方裁判所、そして今、控訴中であるというふうに認識をしておりますが、先般、米国で一九一六年法の廃止が承認をされました。そして、今、我が委員会でもこうして本法案の成立に向けて議論させていただいておるわけでございますが、こういう動きがこの東京機械製作所の案件に関する控訴審における審理に大きな影響を与えるものであるかどうか、その辺りの認識をお伺いをしたいと思います。

○政府参考人(北村俊昭君)

 お答え申し上げます。

  外国における裁判の行方につきまして、私ども政府として公式に評価をするあるいは予測をする、そういったことは本来差し控えるべきだと思います。

  そういう意味で一点だけお答えをさしていただきますと、この一九一六年法の廃止が含まれております関税関連一括法案の中では、この廃止、一九一六年法の廃止の効果として、この法律の廃止前に提起され、それまでに係属中のものには廃止の効力は及ばないという規定がございます。

  以上でございます。

○小林温君

 まあ、そういうお答えなんだろうというふうに思いますが。

  では、仮にこの法案が成立をいたしますと、現在控訴中、提訴されております東京機械製作所は具体的にどういう手続を取ることがこの国内において、我が国の中において可能であるのか、その結果どういう判決が出されることが見込まれるのかについて御認識をいただきたいと思います。

○政府参考人(小川恒弘君)

 お答え申し上げます。

  アメリカにおける訴訟は、現在、控訴審での審理がなされておりますけれども、仮に東京機械製作所の敗訴が確定した場合、ゴス社は勝訴判決に基づきまして、東京機械が控訴を行う際に提出いたしました保証書を執行いたしまして同社から実際に四十億円を得ることになるわけでございます。

  これに対しまして東京機械製作所は、本法に規定されました損害回復請求権を行使することによりましてゴス社から四十億円を取り戻すとともに、アメリカの訴訟に要しました弁護士費用などの訴訟費用、利息、諸経費などの損害賠償を請求することができることになるわけでございます。

  具体的には、まず、本法に基づき、東京機械製作所はアメリカのゴス社に対しまして、四十億円、それから東京機械が訴訟に要しました弁護士費用などの回復を求める訴えを日本国内の裁判所に提起することができるわけでございます。さらに、東京機械製作所は、ゴス社の一〇〇%子会社に対しても同様の訴えを提起することができます。

  これらの訴えを受理いたしました日本国の裁判所は、本法に基づきまして、ゴス社及びその一〇〇%子会社に対し四十億円、それからアメリカでの訴訟に要した費用などを東京機械製作所に支払うことを命じる旨の判決出すこと、命じる旨の判決を出すことが見込まれるところでございます。

  以上でございます。

○小林温君

 分かりました。

  では、そういう判決が出されるというふうに見込まれるということでございますが、その場合、東京機械製作所はゴス・インターナショナル及びその子会社が日本国内に有する財産について損害回復の請求をできるということになっているかと思いますけれども、ゴス・インターナショナル若しくはその親会社、子会社は、その場合、四十億円に見合うような十分な資産を有しているんでしょうか。

○政府参考人(小川恒弘君)

 お答え申し上げます。

  損害回復法に基づきます裁判の結果、被告である米国ゴス社及びその一〇〇%日本子会社などに損害回復を命じる判決が出た場合、東京機械製作所はその判決に基づき、アメリカ・ゴス社が日本国内において有する財産、例えば同社が日本子会社など取引先に対して有する売買代金債権、それから同社が日本国内で有します特許権などの知的財産権などに対して執行することが考えられます。また、ゴス社の一〇〇%日本子会社などに対しては、同社が国内に有する財産に対し判決の執行が可能でございます。

  米国ゴス社が日本国内に保有する資産の規模については情報が公開されていないため不明でございますけれども、同社の一〇〇%日本子会社は埼玉県狭山市に工場を持ちまして実際に生産活動を行っているというふうに聞いているところでございます。

  以上でございます。

○小林温君

 本案に係る事案が今一件、この具体的に東京機械製作所の案件でございますので、法案の成立後は速やかに損害回復が図られるような、そういうバックアップもお願いをしたいというふうに申し上げておきたいと思います。

  一番最初の質問で、アメリカが開かれた市場である一方、保護主義的な通商政策も度々採用するということも指摘をさせていただいたわけでございますが、一方、日本は貿易立国として与えられた条件を考えると、やはりWTOのルールというものを遵守をしていくと、新しい枠組みに積極的にかかわっていくという姿勢が求められているというふうに私は認識をしております。そんな中で、日本が重視をしておりますアンチダンピングのルール交渉、これについては交渉の促進を進めていくということが政府においても再認識をされているわけでございますが、今後このWTOでのルール交渉についてどのような見通しを政府がお持ちであるか、お伺いをしたいと思います。

○国務大臣(中川昭一君)

 二〇〇一年十一月のドーハがスタートしたときに、いわゆるルール交渉、アンチダンピングを含めたルール交渉が議題としてスタートしているわけでございまして、これは主に日本等が積極的な役割を果たしているわけであります。ダンピングはいけないんですけれども、そのアンチダンピングが余りにも自由貿易をある意味で阻害するようなものではいけないという立場に立っているわけでございます。

  その後いろいろありましたけれども、今年の七月のジュネーブでの大枠合意におきましても、幾つかの項目の中の一つとしてルール、ここにアンチダンピングが入っているわけでありますけれども、これについても留意をするというふうにあの大枠合意文書の中に明記をされておりますので、引き続き、一部の国がこの議論に消極的あるいは反対の国々がありますけれども、やっぱりきちっとしたルールを確立することがWTOのあるいはまたDDAの目的達成のために必要でございますので、日本としては引き続きこのアンチダンピングに関するルールの確立のために努力をしていかなければならないというふうに考えております。

○小林温君

 このルール交渉については是非リーダーシップを取っていただくように御努力をお願いをしたいと思います。

  そういったルール交渉がWTOの場で進められている一方で、これは前回のFTAの議論の際にも私の質疑の中でも述べさせていただきましたが、一時期アメリカの通商関係の仕事をしていた人間として、やはりこういう通商政策の決定に当たっては、アメリカというのは国益であるとか自国の企業の利益を守るためにいろんな戦略的なアンチダンピング措置も含めて採用してくるということ、保護主義的な措置を取ってくるということが間々見受けられるわけでございます。

  今回の一九一六年法、それからもう一つ、バード修正条項というのもこれから日米間に残っているアンチダンピング措置の濫用の事案としてはあるわけでございますが、こうした一種アンチダンピング措置の濫用というような状況について、政府としてはどのような姿勢で取り組んでいかれるのかということについてお聞きをしたいと思います。

○副大臣(保坂三蔵君)

 お答えいたします。

  ただいまもお話がございましたとおり、アンチダンピング措置の発動に関しましては、WTOのルールに基づけばこれはもう一切問題はないわけでございますが、しかしながら、御指摘いただきましたとおり、一九一六年法やあるいはバード修正条項のように、現実にはルールの濫用というような状況の事実がございます。

  我が国といたしましては、このような事例が起きましたときには、当面二国間で粘り強く交渉して是正措置を取るように努力してきたところでございますが、遺憾ながらそのような方向に至らない場合はWTOに提訴するというようないわゆる紛争手続を取ることにしております。この一九一六年法もあるいはバード修正条項もここの部分に該当する事例でございます。

  昨日も御存じのとおりゼロイング、これはアンチダンピングのマージンの拡大計算方式でございますが、この問題につきましてもWTOに対しまして米国に対する協議の要請を行ったところでございまして、いずれにいたしましても、このような紛争処理の国際ルールに基づいた手続にのっとって濫用防止に努めていく、これが我が国の方針でございます。

○小林温君

 最後になりますが、やはり我が国は、繰り返しになりますが、貿易立国としてこれからも生き残っていかなければならないわけでございます。世界がFTA、EPAという方向の中に進む中で、WTOのルール作りにもしっかりとかかわり、そして質の高い貿易体制を作っていくことによってのみ我が国の国益というものは確保されるというふうに思います。

  是非、今回の法案の中身も含めて、今後とも万全の通商体制を取っていただきますように、大臣始め経済産業省さんにお願いをさせていただいて、質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございます。