ホーム 実績とビジョン 活動報告 国会発言録 講演実績 関連記事 プロフィール ブログ リンク集
国会発言録

[第161回 参議院 経済産業委員会 2004年11月16日]

この内容は関連記事でも紹介されております。

    2004年11月18日 神奈川新聞

○小林温君

 おはようございます。自民党の小林温でございます。

 メキシコ合衆国との経済上の連携の強化についての原産地証明書の発給法案の審議でございますが、過去の経緯をひもとかせていただきますと、一九九九年から事前の検討が始まっていたということで、かなりの時間を掛けてメキシコとの間の合意を見たわけでございます。おかかわりをいただいた関係者の皆様には大変な御苦労をいただいたということで、敬意を表させていただきたいというふうに思うわけでございます。

 前にもこの委員会でお話をさせていただいたことがあるかと思いますが、私、九〇年代の前半にワシントンDCの大手の法律事務所におりまして、このNAFTAの実務にかかわっておりました。私のいた事務所がメキシコ側のNAFTAの代表を務めているという関係があって、当時、たった一人の日本人として非常に疎外感を実は覚えてこのNAFTAのメキシコとアメリカとの間の交渉を実は見ていたわけでございます。

 当時の時代情勢からすると、日米間にはまだ経済摩擦がくすぶっておりました。いつアメリカにたたかれるんじゃないかということで、日本は少し肩をすくめていたわけでもございますが、その一方で、アメリカ側は、明らかにこのNAFTAの推進を通じて、ライバル国である日本を何らかの形で外そうという動きが実はこうしたNAFTAの締結の中であったということを私は間近で拝見をさせていただいていたわけでございます。

 当時、例えばメキシコ、アメリカ国境には自動車始めたくさんの日本企業のプレゼンスもありましたが、小競り合いというか、例えば割当て制だとか、それから原産地規則の問題とかで、日本企業どうしていいのか分からない状況下にもあったわけでございます。日本は、ガット、WTO体制を中心にその維持強化に努めるというのが当時の方針でもございましたし、その中で国益の確保を追求していくという方針だったわけでございます。

 私、そういう日本の姿をワシントンから見ておって、もしかすると日本というのはこの通商戦争の中で時代に乗り遅れるのではないかということも感じていたのも事実でございます。

 当然、WTOのルールが変わったり、あるいはWTOで扱われない分野での自由化ニーズが急速に高まったということもあったかとは思いますが、この日本とメキシコのEPAが今まで存在しなかったことにより、我が国は四千億円の輸出の機会を毎年失ってきたという試算がございます。こういう数字に併せて、メキシコとの貿易の中に占める割合も例えば六・一%から三・七%に下がっているということもあるわけでございますが、こういうことに至ったということは、私は、やっぱり明らかに通商外交における戦略ミスが我が国にあったのではないかというふうに思わざるを得ないわけでございます。

 この点について、どうしてこういうことが生じたのか、そして、今後こういうことが二度と起きないように、FTA、EPAをめぐる問題においてどういう外交姿勢、通商政策上の姿勢を展開していく考えかということについて御見解をお伺いしたいと思います。

○国務大臣(中川昭一君)

 おはようございます。

 今の小林委員の御指摘は誠に重要な、このWTOあるいはEPAを考えるときの決して忘れてはならない大事な視点だと思っております。小林委員はもう実際にワシントンでお仕事をしながら実感としてそういう体験をされたということは、大変貴重というか、御苦労されたんだろうと思います。

 言うまでもなく、戦後のガット体制が、ブロック経済からの脱却ということで、世界をみんなでルールを作ってオープンにやっていきましょうということでございました。ただ、これは今から、あえて私の感じとして申し上げますと、先進国中心という形で進んできたことも事実だろうと思っております。

 そういう中で、ガットができたときはあれ四十数か国、四十七か国か何かでスタートしたと思いますけれども、日本とかドイツとかが入っていって広がってまいりまして、何回かのラウンドを経て、そしていよいよウルグアイ・ラウンドになったときに、私の記憶では、日本は多国間の貿易体制というものは大事であるということでやってきたと思いますけれども、九〇年の前半ぐらいにいったんウルグアイ・ラウンドの見通しが全く立たなかった時期があって、中座したという状況の中で、アメリカを含めて各国が二国間にばっと走っていったわけでございます。これが文字どおり今から考えるとFTAということでNAFTAになり、また御審議いただいておりますメキシコも今や三十二の国や地域とFTAを結ぶようになっていった。

 日本は、率直に申し上げて、私もその当時自民党の農林部会長という立場で見ておりましたけれども、ウルグアイ・ラウンドをどうしようかということで頭が一杯でございまして、世界の国々が二国間の最恵国の体制を作っていくと、しかもそれはガット上もWTO上も認められたわけでございますから、正直言って出遅れたということは事実だろうと思っております。日本は貿易立国ですから、世界じゅうの国と平和な関係に基づいて貿易を拡大していかなければならないにもかかわらず、結果的に自ら障壁を高めてしまった。メキシコにおいても、マキラドーラという体制がございましたけれども、それがNAFTAによって廃止された後、非常に不利益を被ったということでございます。

 遅かったわけでありますけれども、今懸命に、メキシコの重要性についてはもう、余り長く答弁すると怒られますのでやめますけれども、極めて重要なメキシコと今回EPAを結べたということは、そして御承認の御審議をしていただくということは大変有り難く重要だと思っておりますし、今後も東アジアその他、積極的にやっていくことが日本経済の発展につながっていくことだというふうに考えております。

○小林温君

 一つ私、象徴的に覚えているのは、そのNAFTAが合意をされた日はワシントンじゅうで至る所でパーティーが行われていまして、正に戦争の勝利を祝っているような雰囲気だったということを覚えているわけでございます。ですから、この教訓を是非生かしていただいて、今後の通商戦争には日本は負けないぞと、こういう決意で臨んでいただきたいということをお願いをしたいというふうに思います。

 一方、世界の流れがFTAに向かっているからということで、とにかく二国間のFTAをどんどん結んでいけばいいのかということでもまたないわけでございます。結局、急速に各国がFTAの重要性に気付いて、個々別々のFTAを二国間で結んだ結果、今お互いに整合性が全く取れない、かえって、原産地規則だとかその他いろいろな問題が複雑に絡み合って自由貿易が逆に阻害されているという、俗に言われるスパゲッティ・ボール・フェノメノンという言葉もあるわけでございますが、日本にとってみれば、日本と相手国の二国間の貿易が、その自由化の度合いが高まるということももちろん重要ですけれども、と同時に、マルチで貿易をする諸国間の相互の障壁がどんどん低下をしていくと、これはWTOの理念でもあるわけですが、これも忘れるわけにはいけないというふうに思うわけでございます。

 ですから、日本は残念ながら後発であると言わざるを得ないわけでございますが、後発であるからこそしっかりと戦略を持って、今FTAで先に進んでいる国が直面している問題をうまく回避できるのではないかと私は思うわけでございまして、二国間のFTAを作っていっても最終的には非常に大きなところで枠組みが共通して存在をして、例えば東アジアを念頭に置けば、全体で質の高い自由貿易が確保される、そのために日本がどういうふうにルール作りにかかわっていくかと、あるいはいかに主導権を取ってそのルール作りにかかわっていくかということが今問われているんだろうというふうに思います。

 そこで、APECが開催を今日からされるわけでございます。大臣も行かれるのか行かれないのか、まだ難しいところのようでもございますが、このAPECの中でFTAは一つの主要議題になっております。議長国のチリはFTA案のモデル案を提示をしたいということで、積極的に提言もしているようでございますが、こういうモデル案がいいかどうかということも含めて、日本としてAPECの中でのFTAの議論にどうかかわっていくかということについて御見解をお伺いしたいと思います。

○国務大臣(中川昭一君)

 チリで行われますAPECの閣僚会合並びに首脳会合では、今、小林委員御指摘のように、このWTO、FTA、あるいはまたAPECの中の経済連携をどうやっていくかということが主要な議題になるというふうに聞いております。チリはもとよりメキシコと同じようにFTA先進国でございますから、多分積極的な提案があるというふうに思っております。

 今、スパゲッティボールの話がございましたけれども、もとよりWTOルールとFTAルールというものは別々、あるいはまたお互いにマイナスの影響を及ぼすものであってはならない、WTO上の協定にも基づいて、そしてトータル、整合性の取れるいい発展になっていくという共通の目的にあるというふうに考えておりますので、そういう前提でAPECでこのような議論がなされる、日本が日本の国益と世界貿易発展のためにどういうふうに役割を果たしていけるかということについて、真剣に考えながら会議が行われるものと考えております。

 ちなみに、今御指摘のように、私はまだ院の御了解をいただいておりませんが、何とぞよろしくお願いをいたします。

○小林温君

 個人的には是非大臣に行っていただいて、堂々と我が国の主張を展開をしていただきたいというふうにお願いを申し上げたいと思いますが、メキシコ以外、各国との交渉状況についてもお聞きしようと思ったんですが、後に回させていただいて、その今のルール作りということでございます。

 各交渉、二国間の交渉の中には例外規定が当然盛り込まれるわけですけれども、特に原産地規則というものもその条件の中に入るわけです。これをいかに例外を少なくするか、そして透明性を持たせるか、これを質を担保するという意味で是非実現をしていかなければいけないというふうに思うわけでございますが、と同時にスコープを広くする、これは例えばバイからリージョナルな取組をしていくということも一つでございましょうし、それからFTAとEPAという言葉がございますが、物の取引にどちらかというと特化しがちなFTAという概念に対して、EPA、もう少し広い部分で制度の構築とか経済・技術協力、そういうところまで含んで交渉ルールにおいても枠組みを作っていくということがこれからのルール作りの中で必要だと私は思うわけでございます。

 昨年のAPECの後に、新聞あるいはメディア各社が、東アジア地域でのEPA、FTA競争で日本が出遅れたと、こういう記事あるいは報道が躍ったわけでございます。中国は以前からこのアジア地域におけるFTA、EPAの推進にかなり積極的でございまして、いろんなところでリードをしようというふうに思っているわけでございますが、これはやっぱり発展途上国間のFTAというものは、その授権条項の適用も事実上認められているわけでございまして、先ほど申し上げたような関税撤廃の域を超える質の高い経済連携には中国がリードしている限りならないというふうに私は思います。

 ですから、日本としては、やはり将来的に質の高い東アジア全体の経済連携を目標に置く、またかつWTOにも加盟した中国にもビジネス環境の整備をしっかりと迫っていくと。こういう意味におきまして、日本がこの東アジア全体での経済連携の質を高めていくということを実現をしていかなければいけないというふうに思います。

 こういう考え方の下に、政府が更に積極的に東南アジアへのアプローチ、まあ中国、ちょっといろいろ厄介なこともございますけれども、対中国もにらんだ上で進めていくということについてその意義をお伺いをできればというふうに思います。

○副大臣(保坂三蔵君)

 大変包括的なお話で、私も参考になりました。

 中国を中心とするというよりも、日本がイニシアチブを取って東アジア経済圏、EPAを構築していくということは極めて重要なことだと存じております。御案内のとおり、中国が二〇〇一年の十一月、もう三年前でございますが、包括的な経済協力の枠組み協定を結びました、ASEANとの間で。そういう点では、先ほど大臣がいみじくも申し上げましたように、メキシコとのEPA協定がいささか出遅れた感があると率直なお言葉がございましたが、中国に関しましても、時期的にいえば、時系列的にいえば、確かに三年、日本は後れているような形に相なります。

 しかしながら、日本は技術や資金で東南アジア各国に対しましては日常的に非常に深い通商関係を持っておりまして、そういう点では決して後れを取っていると思えません。また、小林委員お話しのとおり、中国の場合は途上国同士の協定でございますので、そういう点では例外品目が多く、非常にまだまだレベルの上では日本の目指している高レベルな総合的なパッケージということにはならないと思っております。

 ただ、二〇〇一年の協定の後に、二〇一〇年、ASEAN各国と、そしてまた二〇一五年までには新たな加盟国と順次協定を結んでいくという取決めになっておりまして、そしてまた来年の一月にはアーリーパッケージで、アーリーハーベストで農産品の一次関税引下げなどが行われますから、決して私どもは先んじているとは思っておりません。

 しかし、いずれにいたしましても、EUやアメリカ、二極を見ながら、東アジア経済圏が現実的にEPAでそれぞれ結び合って自由貿易を推進していくという点では、日本はこのリーダー、イニシアチブを取っていくことを目指しております。おかげさまでフィリピンとの話も進み、またマレーシア等、そしてまた加えて韓国、それぞれ私ども交渉が進んでおりますので、これらを根っこにいたしまして、順次東アジアの中での統一ルール作り等につきましては努力していく決意でございます。

○小林温君

 いずれにしても、その中国、ライバルになるかパートナーになるかは別にして、対中国政策というのを念頭に置いていただきたいと思います。

 それで、時間もないので最後になりますが、いずれにしても、今FTAの動きばらばらだということありますが、究極的には東アジア全域の統合を目指すべきだということについて実は各国間の意見は一致しているんじゃないかというふうに思いますし、その中で日本が経済統合をどういうふうに支援していくか、あるいはリードしていくかということがこれから問われるんじゃないかと思います。そして、これを推進するためには、例えば省庁の縦割りというようなことも言われておりますけれども、そうした弊害を乗り切って、乗り越えて、自ら司令塔となって国益を考え、政治的な決断を行うという主体が必要になるかと思いますが、この点について大臣の決意をいただきたいと思います。

○国務大臣(中川昭一君)

 現在、四か国、それからASEAN全体と来年四月からやろうということになっておりますが、小林委員御指摘のように、それぞれ国によってやり方は違うとは思いますけれども、基本的な戦略というものをきちっと持つということは、冒頭申し上げましたように極めて大事なことだというふうに思っております。

 そのためには、政府一丸となって、そしてまた国会のいろいろな御指導もいただきながら、そして関係業界ともよく相談をしながら、そしてまた相手の立場もよく理解をしながらやっていくことが大事だろうというふうに思っております。

 そういう意味で、よく御指摘いただきますが、政府はばらばらではないかというお話がありますが、少なくとも今まで締結されましたシンガポール、メキシコに関しましては、セクターによって極めてセンシティブな部分はございましたけれども、関係各省あるいはまたトップの我々がよく連絡を取り、総理の指示、あるいはまたリーダーシップの下でやってきた、そしてまた、それによって結果が出たということは事実でございます。

 今後とも、ますますその別の更に広い分野での交渉が今行われている国もございますので、そういう御指摘が事実として国益に反するようなことがないように頑張っていきたいというふうに思っております。司令塔をどこに一本化するかしないかということにつきましては、国会等の御議論、あるいはまた最終的には総理大臣の御判断になるというふうに考えております。

○小林温君

 終わります。ありがとうございました。