ホーム 実績とビジョン 活動報告 国会発言録 講演実績 関連記事 プロフィール ブログ リンク集
国会発言録

[第159回 参議院 経済産業委員会 2004年5月27日]

この内容は関連記事でも紹介されております。

    2004年5月28日 神奈川新聞

○小林温君

 自民党の小林温でございます。

  本日は特許法改正案の審議でございますが、私は一昨年、昨年と二度特許庁の方にお伺いをして視察をさせていただきました。実際に審査現場も見せていただいたわけですが、その際に感じましたことは、後ほど触れさせていただく最新鋭の電子化されたシステムと、それからすばらしいその審査ノウハウを持った審査官のいわゆるたくみの技が融合して我が国のイノベーションを支えていると。ひいては我が国の産業競争力あるいは経済活力の基盤を支えるような社会的インフラの一端をこの特許庁の皆さんに担っていただいているという事実でございました。

  今回の法改正によって、やはり今の我が国の知財戦略全体の中においてこういう取組が進んでいくということが可能になるということだと思いますので、そういった観点から今日は質問をさせていただきたいというふうに思います。

  まず、先般、中川大臣が発表されました新産業創造戦略、いわゆる日本版ヤング・レポートというふうに言われているわけでございますが、ヤング・レポートというのは、そのアメリカの今の競争力の源泉のスタートラインに立った重要なレポートとして位置付けられているわけでございます。いずれこの戦略が成功裏に終われば、中川レポートということで後世に長く伝えていただけるようになるような、そういう中身も非常に野心的に取り上げていただいているというふうに私は思います。

  その新産業創造戦略の中で描かれました新産業ビジョン、それと今般の特許法の改正案との関係について幾つか質問をさせていただきたいと思います。

  先ほど申し上げましたように、一九七〇年代から米国の経済というものは衰退に向かっていたわけでございますが、その再生を果たす中でヤング・レポートというものは非常に大きな役割を果たしたわけでございます。産業競争力の強化を目指した、あるいは通商政策も重視したと。一方で、IT政策の実は出発点にもなったわけでございます。そして、その中で知的財産権の保護という方向性を打ち出し、いわゆるプロパテント政策をアメリカが採用することを明確に宣言したレポートでもあるわけでございますが、以後アメリカはこのヤング・レポートを基に確固とした国際戦略の下、米国の知的財産の保護を強力に推進してきたわけでございます。

  今回の新産業創造戦略の中では、燃料電池、情報家電、ロボット等、我が国が現在世界最先端の技術を有する七分野について将来ビジョンを示した、あるいはその分野横断的な重点政策として知的財産権の政策というものも明確に位置付けられているわけでございます。アメリカの例を見るまでもなく、この七分野に代表される我が国が競争力を有している分野において成果を上げるためには、その知財政策の推進ということが不可欠でございます。そういう意味において、このレポートの基本的方向性というものは評価に値するんじゃないかと思います。

  そこで、まず大臣にお伺いをさせていただきますが、今回の法案の中では、特許の審査迅速化に向けて包括的な取組が提示をされているわけですが、この特許審査の迅速化というものがこの新産業創造戦略の中でどのように位置付けられているのかと、この意義について大臣のお考えをいただければと思います。

○国務大臣(中川昭一君)

 おはようございます。

  今、小林委員から御指摘の新産業創造戦略を評価していただきまして、誠にありがとうございます。これはあくまでも一つの土台といいましょうかビジョンでございまして、これを実現していくためには、いろんな国としてやるべき問題、法律面あるいは財政面等々のバックアップも必要でございますし、それから産学官、あるいはまた政府部内、これはもう経済産業省だけではない問題も提起しておりますので、あるいはまた地方との関係といった総合的な、何といいましょうか、チームプレーが必要だというふうに思っております。そういう中で、新しい産業群を特に頑張ってもらおうということで、主役はあくまでも企業、産業、地域であり人であるというふうに思っておりますが、それにバックアップができるだけ必要であるという下で作ったものでございます。

  そういう中で、大きな柱としては、やはり人材の育成と知的財産の更なる、何といいましょう、知的財産が更に日本の中で大きくなっていく、発展をしていく、前進をしていくということが極めて大事なツールであるというふうに考えております。知的財産につきましては、正に知的財産が生まれるようなインセンティブを与えることが必要であると同時に、その生まれた知的財産がきちっと権利が保護されて、そして保護されると同時に、特許権として保護されるものが公開されたらそれを利用して世界じゅうの皆さん方がルールにのっとって活用していただくということまでが必要なのではないかというふうに思っております。

  そういう意味で、その知的財産を一つ作った、それを特許として申請をして保護されるという中には、今御審議をいただいております特許法の中の迅速化の問題であるとか、あるいはまた待機の解消の問題であるとか、あるいは、特に資金面あるいはいろんな面で大企業に比べて厳しい中小企業に対する特許申請のための支援制度でありますとか、そういうものが必要になってくるというふうに考えておりますので、正に新産業創造戦略の目指す方向性の大きな前提条件として、この特許法の改正、あるいはアメリカなんかはヤング・レポートを作った後に産業スパイ法とかあるいはエクソン・フロリオ条項とか、そういった知的財産を守るためのかなり強力な法制度もセットでやっているわけでございますから、特許の侵害に対する問題も含めましてやることによって、日本人の知恵あるいは技術、新技術、新発明等が生まれるインセンティブをより与えていくと同時に、生まれたものをきちっと保護することによって発明者の権利あるいは関係者の権利を守りながら、そしてその新知的財産を有効に活用していくような体制作りにしていきたい、そのためにも本法案の審議は極めて重要であるというふうに考えております。

○小林温君

 ありがとうございます。

  インセンティブ、あるいは権利の保護、ルールにのっとった活用という、そういう道筋をお示しをいただいたわけでございますが、この戦略の中で研究開発の効率の向上というものを知財政策によって図っていくという実は中身があるわけでございます。

  私、これ実は大変重要だというふうに思うわけでございますが、この研究開発効率の向上、これ具体的にどういったものを意味されるのか、あるいは目指されているのかということについて、改めて確認をさせていただきたいと思います。

○政府参考人(今井康夫君)

 お答え申し上げます。

  先生御指摘の問題でございますけれども、現在特許になる特許率が非常に低下しておりまして、五割を割り込んで、昨年は四九・九%ということになりました。

  非常に割り切ってあらあらに申し上げますと、現在、民間企業は十二兆円の研究開発を行っておりますので、それはすべてが特許に向かっているということではありませんが、非常にあらあらに申し上げまして、そのもし半分が特許に結び付いていないということになりますとこれは非常に大変なことでございます、六兆円ということになるわけでございますけれども。こういう事態を少しでも改善をして企業の特許率を上げていく、研究が特許に結び付くようにしていくということによって研究開発効率を非常に高めることができるのではないかということでございます。

  そして、この特許率が五割を割ったという、割っているという原因でございますけれども、やはり企業の研究者が研究を開始する時点で過去の従来技術というものについての十分な調査が行われていない、それによって重複投資が行われているんではないかというのが問題意識でございまして、私どもの調べたところでいいますと、特許庁の審査官が拒絶をした場合に、拒絶理由については、平均しますと出願の八年前の技術で拒絶をされているという事実がございます。また、私どもの計算でいいますと、研究開発時点でもし調査を徹底的にしておれば、過去の技術を徹底的に調査しておれば、七六%程度がそれでそういう技術があるということが分かったかもしれないというふうに私どもとしては計算をしております。

  そういたしますと、研究開発の時点でどういうふうに、その過去の技術を徹底的に調査をしてもらった上で研究に入ってもらうというのが大事なことでございます。そして、今回の新産業創造戦略におきましては、新しい試みといたしまして、特許審査の審査官が持っております審査ノウハウといいますか、そういうものを研究者の方々に開放してこれを活用してもらいたいというようなことを考えているわけでございます。

  具体的に申し上げますと、ちょっと長くなりますけれども、特許の審査官というのは、約五千万件という大変大量な従来技術の蓄積の中から重要な、出願に関係するような技術を漏れなく過不足なく必要な情報だけを取り上げて、それで審査をするわけでございます。もしそういうようなノウハウが研究者が持つことができれば大変研究効率が高まる、無駄な研究といいますか、そういうものがなくなるんではないかということで、私どもは、言ってみますと審査の秘伝のような、審査の秘伝といいますかノウハウといいますか、そういうものについて、今まで蓄積してきました、特許庁審査官が蓄積してきましたそういうノウハウというものを民間研究者に開放していくと。代々の審査官が暗黙知として受け継いできたコツといいますか、そういうものについて、これを分かりやすく整理をして、私どもサーチ戦略ファイルというふうに呼んでおりますけれども、特許庁の中で呼んでおりますけれども、こういうものも開放していくと。

  そうしますと、先ほど申しましたように、研究開発段階で研究者が常日ごろ昔の技術を確認をしながら、行き止まりかどうかを確認しながら進んでいくことができるということでございますので、研究開発の効率に非常に役立つんではないかというのが考え方でございます。

○小林温君

 日本全体のRアンドD投資に対してどのような効率化が図られるかということは、これは我が国の競争力にもかかわってくるところでもございますので、是非この視点で知財政策を進めていただきたい。それから、今の長官からお話がありましたように、審査官が持っていらっしゃるノウハウ、これは大変な蓄積だというふうに思います。これを外に向けてオープン化していくという取組についても引き続き進めていただきたいとお願いを申し上げるところでございます。

  次に、中小企業の問題について質問させていただきたいと思いますが、やはり知財立国を実現していくためには、我が国の企業の大宗を占める中小企業が知的財産を持っていかに武装をしていくか、積極的に活用できるようになるかということが大きなかぎを握っているというふうに思います。

  現在でも中小企業に対しては審査請求料等の減免制度があるわけでございますが、あるいはこの点についてはその対象範囲等も広げていただいていると思いますが、現在のこの制度の利用状況についてお伺いをしたいと思います。

○政府参考人(迎陽一君)

 お答え申し上げます。

  料金減免制度のここまでの利用実績というのは、ここ三年平均で年間八百件程度と非常に低い数字となっております。

  御指摘ございましたように、減免制度の対象についてはその拡充をいたしまして、現在のところ中小企業の出願の約半分、試算によりますと一万五千件ぐらいまでがその減免の対象になる可能性があるというふうなことでございますけれども、実績が非常に低調になっているということでございまして、これはやはりこの制度が十分周知されていないんではないかということで、今年の一月から、特許出願人、過去に出願をされた方四万社、それからその手続を代行される弁理士の方々約五千七百人の方にも特許庁の方からダイレクトメールを出して周知を図ったところでございます。

  こういった活動をしました結果として減免制度の利用が増えてきているという感触は得ておりまして、実際問題として、年間八百件と申しますと月平均六十件余だった利用実績が、今年の三月、四月では一か月に二百件ぐらいの利用が出てきているというふうなことでございますんで、今後とも、せっかくの制度でございますんで、利用実績が十分に上がるように更に努力をしてまいりたいというふうに考えております。

○小林温君

 是非、その利用実績、更に伸びるような周知徹底も図っていただきたいというふうに思います。

  ただ、この減免制度も含めて中小企業に対していろんな施策を打っていただいているわけでございますが、一方、大企業と中小企業間の間での知財デバイドという言葉もございます。やはり、資金、人材に恵まれている大企業とそうでない中小企業との間には、知財戦略をめぐってもやはり大きな壁があるというのも事実だと思います。ですから、この減免制度含めて、様々な中小企業に対しての施策というものはあくまでも呼び水として、結果としては知的財産を使いこなすことのできる中小企業をいかに多く育成できるかということが知財政策の中でも大きな意味を持つと思います。

  この点について、経済産業省として、特許庁としてはどのようにお取り組みになられる考えか、お聞かせをいただきたいと思います。

○副大臣(坂本剛二君)

 中小企業が知的財産を十分に活用するためには、研究開発段階から五千万件の特許情報を活用して絞り込んでいかなくちゃならないわけであります。出願から権利の取得までの様々な手続を行って、さらに自らの権利を活用してライセンス収入を得るなど、幅広い知識が必要とされております。一方、大企業であれば社内に専門のセクションを設けることによって十分に知的財産の活用を支援する体制を整えることが可能ですが、中小企業においてはこれが困難であるのが現状でございます。

  経済産業省としましては、中小企業に対して料金減免制度や早期審査制度だけでなく、研究開発段階から、出願、権利の取得、活用及び事業化に至るまで総合的な支援策を講ずることが必要であると考えております。こうした観点から、特許制度に関する説明会や出願に関する相談、従来技術調査の支援などを行うとともに、技術開発支援や金融支援などの中小企業施策や産業クラスター施策などの諸施策との有機的な連携を図りつつ、総合的な支援策を実施しているところであります。

  また、こうした総合的な支援策を実施するためには、人材の充実が必要になってまいります。人材面で不利になりやすい中小企業について、知財に通暁した人材を育成したり、中小企業をサポートする人材をアドバイザーとして派遣するなど、積極的な支援策を講じてまいりたいと考えております。

  こうした取組によって、本当に知財、知的財産を使いこなすことのできる中小企業の育成に一層努力してまいりたいと考えています。

○小林温君

 是非、中小企業に対する様々な対応をお願いをしたいと思います。

  次に、国際的な問題について少し質問させていただきたいと思いますが、グローバルな規模で特許の出願数が増加しているということは御承知のとおりだというふうに思います。その中で、これは新産業創造戦略の中でも書かれているわけでございますが、一つには特許制度の国際的な調和、ハーモナイゼーションをどう推進するか。それから、我が国で生み出された知的財産をいかに保護していくか、これは発展途上国との関係になるかと思います。

  さらに、特にITの世界等においては標準化戦略というものが、企業や産業界、例えば今のOS等、半導体等見ると、これは国家戦略にも大きくかかわってくる、競争力にもかかわってくるわけでございますが、こうした世界特許への取組というものは様々入り交じって容易じゃないということは分かるわけでございますが、我が国として特許の国際戦略というものについて今どういう考え方を持ち、そしてどのような外交努力を行っていこうとしているのか、これについて政府の御方針を伺いたいと思います。

○国務大臣(中川昭一君)

 今、小林委員御指摘のように、やはり世界じゅうどこでも、いいものを発明したり知的財産を生み出した人というか、その発明者に対しては、やっぱり特許を申請した場合にはきちっと保護されるというのは、こういう世界が狭くなっている状況の中ではいわゆる世界特許権の保護、確立というものが必要だろうというふうに思っております。しかし、現実には、例えばWTOのTRIPsの議論とか何かでも、特に発展途上国の方から、それは先進国の横暴であるみたいな批判が強いことも現実でございます。

  我々としては、きちっとした権利保護というものが、先ほど申し上げたようにインセンティブにもなりますし、特許を利用する人々にとっても最終的にはプラスになるという考えを持っておりますから、現実には、特許の八割がアメリカ、EUそして日本という現状であり、しかもアメリカは御承知のとおり先発明主義という、全く日本やEUと違うシステムを取っておるとか、あるいはいわゆるグレースピリオドの問題であるとか、日米欧だけでもかなり基本的な部分で特許制度、知的財産保護制度が違うという現状、これをまず直していくということが重要なのではないかなと。もちろん、最終的には途上国の御理解もいただきながら世界統一ルールというものにしていかなければならないということだと思います。

  それからもう一つは、模倣という、あるいはまた知的財産の侵害という問題につきましても、先ほど申し上げましたが、きちっとした形で、とにかくこれは各国とも、知的財産権の問題と少し違う分野で知的財産を模倣したり盗んだりということが堂々と行われているという現状に対しては毅然とした態度で各国間でよく話合いをし、協力をしながらやっていかなければならないというふうに考えております。

○小林温君

 国際化という問題についても、更に積極的な取組を是非お願いしたいというふうに思います。

  次に、青色発光ダイオードで有名になり、今回の改正の中にも盛り込まれております職務発明制度についてお伺いをしたいというふうに思うんですが、判決については、発明者の側は拍手喝采で、これで研究者のモチベーションが上がったと。一方、使用者の側からすると、あんな巨額な対価を請求されてはとても会社を経営することはできないと、そんなつぶやきも聞こえるわけでございますが、一つだけ言えるのは、やはり今ここで職務発明についてしっかりとしたルールを作らなければいけない、そういうことをすべての関係者に対して認識をいただいたということがあの判決の一つの意味だったのではないかというふうに私は思うわけでございます。

  この点については、産業構造審議会でも廃止論から現状維持論まで様々な意見があったようですし、先日、参考人をお招きした際にも、いろいろ御意見はあるようですが、発明者と使用者のバランスに配慮した妥当な内容ではないか、こういう意見も伺ったかに思うわけですが、このような今回の法改正の結論に至った経緯、研究者の発明のインセンティブ、それから企業側の研究開発の投資についてこの法改正がどういう影響を与えるのかということについて御見解をお伺いしたいと思います。

○副大臣(坂本剛二君)

 訴訟が多発しましたことを契機に、職務発明制度見直しの議論が高まってまいりました。平成十四年九月以来、産業構造審議会知的財産政策部会において慎重な審議が行われまして、今年の一月に報告書がまとめられたところであります。その間、昨年の通常国会における参議院の附帯決議において、「発明者と使用者のバランスに配慮して検討を行うこと。」という御指摘をいただいたところです。

  このような見直しの経緯を経まして、今般提出させていただいた本改正案では、各企業の経営環境、経営戦略や社風を理解しているのはその企業の研究者と経営者であることから、職務発明の対価については、基本的にこれら当事者間で自主的に取り決められた対価を尊重することとしております。これによって、研究者にとっては、自分たちの意見を述べる機会が得られるため、発明評価に対する満足感が増しますので、更なる発明へのインセンティブが高まると考えております。また、企業にとっては、対価の予測可能性が増すことによって経営の安定が図られ、更なる研究開発投資の活性化に資することができると考えております。

○小林温君

 今のお答えにもありますように、実際に職務発明を生み出す企業内の研究者、それからそれを知的財産として活用する企業との協力が今まで以上に必要不可欠だということがこの改正案の中身には書かれているんだろうというふうに思いますが、そういう環境整備をまず実現する、そして十分な意見交換の下に契約を結ぶ、こうした文化を日本の企業社会の中にやはり醸成をしていくということが今後必要なんだろうというふうに思うわけでございます。

  ただ、青色発光ダイオードの判決によって、やはりこれから司法の場で決着を付けよう、こういう動きも更に多くなるかというふうにも思うわけでございますが、これを、今回の法改正の中身を、ではいかに司法の判断において担保していくのか、尊重していくのかということ、私は、これはやはり契約の中身についても司法の判断においてある程度尊重されるべきだというふうに思うわけでございますが、この点について政府側はどういうふうにお考えでしょうか。

○大臣政務官(江田康幸君)

 御指摘のとおり、今般の改正案につきましては、企業については対価の予測可能性を増すことによりまして経営の安定化を図れる、また、研究者におきましては、自分たちの意見を述べる機会を得て、その満足感を、発明の評価に対する満足感を増す、こういうバランスの取れた環境整備を図るというのがその目的でございます。

  具体的には、各企業の置かれました経営環境や経営状況、また戦略、研究戦略等、そういうことに熟知しているそういう企業と、またその研究者が十分話合いをした結果としてその契約が成立した場合には、その契約の内容がこの司法の判断においても尊重されるべきと、そのように考えております。

○小林温君

 分かりました。

  ただ、もう一つ、その訴訟例を見ると、かなりその以前の職務発明に対して対価の算定を求めるものも多く見られるわけです。これは青色発光ダイオードもそのとおりでございますが。今回の改正がこれから先の職務発明についてのみ適用されるということになれば、現在既に起きている訴訟、あるいは過去の発明に対してこれから起こされる訴訟については意味を持たないということにもなりかねないかと思います。

  その法律を遡及適用させるということは、これは難しいんだろうというふうに私も理解をしておるわけですが、こういう点については何か対応策をお考えでいらっしゃるのか、お伺いしたいと思います。

○政府参考人(今井康夫君)

 お答え申し上げます。

  先生御指摘のように、現行特許法三十五条三項に規定されております相当の対価の請求権というのは、研究者が企業に発明を承継させた時点で発生しておるわけでございまして、したがって、現行法で発生している権利について、この改正法案、改正法によりましてこれを遡及する、遡及して適用するというのは困難であろうかというふうに思います。

  ただ、研究者と企業が協議を尽くして対価を決定するための取決めが策定された場合、今度この法律に基づいてそういうものが策定された場合に、現行法の下で既に発生している権利に関する裁判においても、その取決めの趣旨とかこの法案の趣旨でございますとか立法府の意思でありますとか、そういうものが参酌されるということを私どもは期待するわけでございます。

  また、これは最終的には裁判所が現行法に基づいて判断することでございますけれども、例えば現行法によって不合理とされないような取決め、きちっとした現行法の手続に従った取決めが行われた場合に、企業と研究者との個別の契約を新たに結びまして、既に発生しております相当の対価請求権をこの新しい取決めに基づいて再計算をすると。そして、その再計算した額で対価を払うというような新しい合意をする、契約をするという場合には、その契約が尊重される場合もあり得るんではないかというふうに考えております。

○小林温君

 私もかつて会社を経営していたときに、社員の中に技術者もおりました。研究者もおりました。なかなか企業側とそういった専門職の方と意見交換をしたりコミュニケーションをしたり、あるいはビジネス全体の枠組みについてそういう研究者の方に理解をいただくということは実は難しいということを私は実感をしておったわけでございます。今回の改正案の中では、企業が社員に対して説明責任をしっかりと果たすということも求めているわけでございまして、是非この点はしっかりと対応していただきたいと。

  ただ、やはり産業ですとか企業によって文化や風土は異なるというのもまた事実でもございます。ですから、ここは、ガイドラインというのはこれは横断的になると難しいと思いますが、例えば事例集のようなものを是非作っていただく、そういう前提だろうというふうに思いますが、それを意見聴取やコミュニケーションの中で活用するということは、今後のこの改正案を施行していく中で大変重要なことだろうというふうに思います。

  そういったことを前提にして、対価の額の算定について行われる従業者等からの意見の聴取、これについては、やはりある程度企業、それぞれその文化、業容等違うということも勘案すべきだというふうに私は思うわけでございますが、この点については政府はどういう御見解をお持ちでしょうか。

○政府参考人(今井康夫君)

 お答え申し上げます。

  今般の改正案におきましては、各企業の経営環境でございますとか経営戦略、社風、こういうものを理解して一番分かっているのはその企業の研究者と経営者であるということから、その対価については自主的な取決めで決められた対価を尊重していくということでございます。

  また、先生御指摘のように、算定に当たりまして、研究者の意見を聴くための適正な手続というものについても、業界ごと、企業ごとに異なっているというふうに考えております。

  例えば、大企業の場合は何千人も研究者がおられますので、それぞれの研究者ごとに、かつたくさんの発明について一つ一つ相談をしながら対価を決めていくというのは大変なことでございます。その場合、それは企業にとっても研究者にとっても負担になるということでございます。そうした場合に、例えばまず企業がルールに従って算出する、対価を算出して、それを支払って、それに異論がある際、研究者が申し出てくれば、それに対して誠実に対応する、不服に対して対応できるというような体制を作っておれば、原則として問題はないというふうに私どもとしては考えております。

○小林温君

 先ほど申し上げましたように、やはり今回のこの改正法が目指すものは、職務発明について、やはり今までとは違ったしっかりとしたルールを作らなければならないと、そしてそれをすべての関係者の皆さんにしっかりとした御認識をいただくということだろうと思います。

  ですから、今幾つか質問申し上げましたような改正法の運用の部分については、是非これから日本の中で、あるいはそれぞれの産業、企業の中で、どういった形がバランスが取れたものであるのかということについてしっかりと御考慮をされて当たっていただきたいということをお願いをしておきたいと思います。

  時間もないようでございますので、最後に特許事務システム見直しの問題についてでございますが、私これ、いろんなところで、先日の予算の委嘱審査の際にも質問させていただきました。決算委員会でもさせていただいているんですが、特許庁のお取組というのは、現在レガシーシステム、三十六の見直しを進めている中で、真っ先に手を付けていただいて結果を出していただいた、今後そういう大きなシステムをこれから見直していく中で、そのモデルになるような取組をしていただいたわけでございます。

  具体的に申しますと、データ通信役務契約というこの説明の付かない契約形態、あるいは残債という、これもえたいの知れない借金なわけでございますが、こういうものの解消に踏み出していただいたということには改めて評価を申し上げたいと思います。

  ただ、これはシステムを電子化をするということじゃなくて、このシステムの見直しというのは、そのシステムによって何を今後実現していくかということが重要でございまして、当然ながら、特許審査の迅速化、今回の改正案の中にも含まれております、あるいは出願者に対するサービスの向上、これをどう図っていくかということがしっかりと中に入った改革でなければいけないと思います。是非、この取組について業務改革を進めていただきたいということをお願いを申し上げ、簡単にそれについてコメントをいただいて、私の質問を終わりたいと思います。

○政府参考人(今井康夫君)

 お答え申し上げます。

  小林先生が主要なメンバーをしておられます自民党のe―Japan特命委員会からの御指摘も踏まえまして、いわゆるレガシーシステムから脱却ということで、本年度、いわゆる残債の一括支払という予算を計上させてもらいまして、既にこの支払を終えております。この結果、ソフトウエアの著作権が特許庁に帰属いたしまして、審査の迅速化のためにより主体的なシステムの開発を実施することが可能になったというふうに考えております。

  私どもは、具体的に現在、業務システム最適化計画というのを策定中でございまして、この業務システム最適化計画というのは、今、先生がおっしゃったような具体的な効果のあるような、審査迅速化その他に効果のあるようなものを盛り込んだものでございまして、現在パブリックコメントで外部のユーザーの御意見をちょうだいしているところでございます。

  一例を申し上げますと、今般、法律でお願いしております従来技術の登録調査機関に関するシステム上のサポートと、こういうものについても今回盛り込んでまいりたいと思いますし、先ほど申し上げましたように、特許庁がこれまで世界最高水準の電子化の下で蓄積してきました五千万件の特許情報、それから審査ノウハウとして蓄積してきました従来技術の検索方法を研究者の方々に開放すると、こういうこともこれからの課題でございますので、盛り込んでいきたいというふうに考えております。

○小林温君

 終わります。