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国会発言録

[第159回 参議院 国際問題に関する調査会 2004年4月7日]

○小林温君

 自民党の小林温でございます。

 私も三年目に議員になってなりましたが、この調査会でイスラム社会の問題、そしてこの東アジアの問題について取り上げていただいて、大変貴重な議論をさせていただいたりいろんな参考人の御意見を拝聴させていただいて、こういうテーマ設定をしていただいた会長始め理事の皆様にまずもって御礼を申し上げたいと、これは常々思っていることでございますので、重ねて申し上げたいと思います。

 議論の中でもFTAについて何度か討議をさせていただきました。今日は少しそのFTAに絞って私の意見を表明をさせていただきたいと思うわけでございますが、今、メキシコとある程度の合意を見て、これから年内中に数か国との協議を残しているわけでございますが、どうもよく言われるのは、我が国のFTAへの取組が受け身であるということでございます。しかし、今の現実の国際社会の流れを見ていると、国際社会が流れているからそれに合わせて日本も追っ掛けていかなければいけないという取組では到底間に合わない、あるいはそのFTAに積極的な意義を見いだすこともできないというのは明白でございまして、今こそ、こうした我々の議論も踏まえて、FTAというものがこの日本の経済社会においてどういう影響を持っているかということ、それを論理的に構成していく必要があるんじゃないかというふうに思うわけでございます。

 先ほど、政府の参考人の皆さんの意見もいろいろいただいたわけでございますが、やはりこれはよく指摘されることでございますが、各役所の所管の業界の、あるいはその産業の利害の調整ということがFTAの各国との交渉の現場においても現実的には露呈されてしまう、あるいはその役所自体の利害というものもそこで実は大きな障害になる可能性もあるわけでございます。今日はこうして参考人の方々もいなくなったわけでございますので、政治家の立場で主体的なFTA戦略というものを議論すべきだろうというふうに思います。

 それで、その際の私なりの留意点というものを考えてみました。まず、やはり我々政治の立場でこのFTAの問題を考えるときに、まず担保しなければならない第一の点がその質だろうというふうに思うわけでございます。

 各交渉の中では例外規定が当然盛り込まれるわけでございますし、あるいは原産地規則というものもその条件の中に入るわけでございますが、これをいかに例外を少なく、そして透明性を持たせていくかということを、まず質を担保するという意味で実現していかなければならない。それと同時に、スコープを大きくする。これは地理的なもののみならず、FTAに対してEPAという言葉があるわけでございますが、FTAというのはどちらかというと貿易、物の貿易を中心にした概念である中で、EPAというのはもう少し広い部分を取り扱う概念でもございますので、関税の撤廃や貿易、投資の自由化だけじゃなくて、例えば制度の構築であるとか経済技術協力、それからその交渉ルールにおいてもその枠組みを作っていくという意味で、このEPAという概念自体をこれから我々はもっと深めていく必要があるんじゃないかというふうに思うわけでございます。

 それともう一つは、先日、予算委員会の視察で九州に行ってまいりましたが、かつて空洞化が叫ばれていた各種の情報家電を中心とする産業の今工場誘致が、実は九州のみならず全国各地で活発になっているわけです。家電メーカー中心に数百億あるいは一千億を超えるような投資にも今踏み切っているわけで、これは、高付加価値の製品の核となる部分はやはり日本国内で生産をしようと、こういう流れが実はあるわけでございます。こういう部分を例えば投資と貿易の補完関係という観点から考えますと、アジアの域内において日本企業の国境を越えた分業というもの、それからその中間財の貿易というものの重要性を増しているわけで、こういう部分もこれから日本の国際戦略を考える上でこのFTAの中にどう盛り込んでいくかということが私は実は重要なんだろうと思います。

 これは、将来的には例えばASEANあるいは東アジア全体の経済統合を日本がどう支援していくかという、これはある意味でいうと、このFTAを日本が推進していく一つのゴールにもなり得べきテーマだと思いますが、こういう点にもつながっていくんじゃないかというふうに思うわけでございます。

 そして、もう一点私が強調させていただきたいのは、やっぱり政治的なコミットメントの必要性ということでございます。今ほどもメキシコとの交渉における省庁間の縦割りの弊害等についても議論があったわけでございますが、この政治的なリーダーシップを各交渉の中でどう担保していくかということも大変重要だろうというふうに思います。

 これは、この調査会の中でも議論が何度か出ましたが、日本版USTRの創設あるいは通商担当の専任大臣の任命ということは、これは政治の側からの働き掛けとして是非報告書等の中にも盛り込んでいただきたいと、こういうふうに思うわけでございます。このFTAの積極的な政治側のコミットメントが結果的にいろいろな改革をリードするということも現実のものでございますし、この調査会の中での議論で農業についての言及もいろいろあったわけでございますが、例えば今、総合的な農業政策の中で所得補償というものを現実的に考えるべきだという議論も今あるわけでございますが、これも例えばFTAの交渉を通じた議論の深まりの中でそういった考え方がある程度公になってきたという部分も私は否めないんだろうというふうに思います。

 そういう意味で、政治の側のリーダーシップをこのFTAの交渉の中でどう生かしていくかということについて、また是非今後議論を深めていただきたいということをお願いを申し上げまして、私の意見の表明とさせていただきたいと思います。