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国会発言録

[第156回 参議院 経済産業委員会 2003年3月28日]

○小林温君

 自民党の小林温でございます。

 三人の参考人の皆様におかれましては、それぞれすばらしい御意見の開陳を行っていただきました。まずもって、感謝を申し上げる次第でございます。

 それで、まず私の第一番目の質問は、今回こういう法整備を行うわけでございますが、産業再生機構を活用したスキームによって、今までできなかったどういうことが可能になるのかということをお聞きしたいわけでございます。

 田作参考人からお話がありましたように、例えば民事再生法、会社更生法といった法的整理も、あるいは私的整理も、今回の産業再生機構を活用した整理も、基本的には実行手段の違いであって、行う中身の手続についてはそれほど違いはないという御意見でございました。

 ただ、この場合に、実際、では今までと違った形で産業再生機構を使って企業再生を行う場合のメリットというのは果たして具体的にどういう部分にあるのか。例えば、メーン寄せの問題を解決したり、それから準メーン以下行にとっては例えばどういうインセンティブが働くのか、企業も銀行も含めてですが、それぞれにどういうインセンティブが働いてこの産業再生機構を活用した整理のスキームというものが今後生まれてくるのかということについてお聞きをしたいわけでございます。

 斉藤参考人からも、今この産業再生機構の社長に内定されて心構えもいただいたわけでございますが、その点について、田作参考人それから斉藤参考人から御意見をいただければというふうに思います。

○参考人(田作朋雄君)

 お答え申し上げます。

 私が先ほど申しましたように、また、今御指摘いただきましたように、会社の実体は同じですから、本来、情報がすべてに行き渡っていて、その当事者間で交渉に係るコスト等もないと仮定すれば、実は産業再生機構は必要ないということになります。つまり、この会社をどう立て直すかというのは、だれが見てもそんなにやりようはない、だれが見てもそれなりの処方せんというものはおのずから浮かび上がってくるので、それをやればいいだけなんです、本来は。ただ、今申しました大前提が実は本当は整っていないわけですね。

 まず、情報の非対称性というものがあります。当然ながら、一方の当事者の方は多くの情報を持っている、もう一方は持っていない、だからそこに判断のずれが出てくる。それから、その当事者間の交渉に係るコストというのは膨大なものがあります。非常に関係当事者が多かったり感情的なもつれがあったりすると、本来合理的な交渉がコストなしでできればいいんですが、残念ながら、実社会ではそうはいかない。そこの情報の非対称性を解除し、交渉のコストを低めるという機能をどこかが手伝わなきゃいけないわけですね。

 その手伝う一つのところは裁判所であります。裁判手続を通して、そういうものを、そういう障害を取り除いて必要な目的を達するということが可能であります。しかし、それしかないということでいいのかということが私は問題だろうと思いますね。

 これは先ほど申しましたように、裁判所へ、出るところへ出ますと、破綻だ、倒産だと騒がれて本当に駄目になってしまうんですね。従業員もやる気なくします。それをなるべく避けたいわけです。

 だからといって、急に今度、あれかこれかで一足飛びに密室でいい加減な私的整理と称するものをでっち上げてしまう、これまた問題の先送りにすぎませんので、本来なら法廷へ出てでもやっていいほどのきちっとしたものを、私的整理でもそれに負けないぐらいのことを追求していくというためにこそ、この産業再生機構はあるんだろうというふうに私は考えております。

○参考人(斉藤惇君)

 今のお話に加えまして、正しく産業再生機構でございまして、倒産、回収を促進する機構ではないということで、あくまでも産業の再生が目的であります。

 したがって、先ほど私が申しましたように、このことを民間ベースや民事再生法等々だけでやっていこうとしますと、現実に、過去十年間、いろいろ法律も改正をいただいたにもかかわらず、それほど進んでいないということは、やはり民間ベースで当事者が全部それぞれの利益マクスマイゼーションという考え方だけでテーブルに着いておきますと、なかなか妥結しないんだと思いますね。

 やはりそこには半官と申しますか、こういう機構が間に入って仲裁をするという役割が非常に重要なんではないかと。なおかつ、こういう機構でございますので、関係いたします産経省ですとか金融庁ですとか日銀等と、いろいろなところと協力して包み込んでいきますので、例えば非メーン銀行等々の行動をある意味では刺激するというようなこともできるというふうに思っております。その辺が少し違うんではないだろうかと、加えて、思っております。

○小林温君

 少し今の関連なんですが、例えばメーン行と対象の企業というものにとっては多分十分にそのインセンティブが働く仕組みだと思うんですが、非メーン行あるいは準メーン行以下のところについてはどういうメカニズムでそういうインセンティブが醸成されていくのかということについて、田作参考人、ちょっとお聞かせいただけますか。

○参考人(田作朋雄君)

 通常、苦しい会社についてはメーン銀行主導の下に何らかの再建策が作られております。問題は、メーンが債務者と一緒になって、今、先生御指摘のように、本来ならその計画を遂行していきたいというときに準メーン以下が協力しないという現象は非常に多うございます。これを俗にメーン寄せと呼んでおるわけでありまして、期限が来たら準メーン以下は全額回収と言い出す、メーンとしても泣く泣く追い貸しをして、その金で準メーン以下を逃がしてあげるという現象が非常に続いております。

 というのは、メーンとしてはそれしか手がないわけですね。それが嫌なら、先ほど申しましたように、出るところへ出て、裁判所へ行くしかない。しかし、メーンが引き金を引いてあの会社をつぶしたとなりますと、メーンバンクとしても先行き大変なことになりますので、これができない。その弱みに付け込んで準メーン以下がメーン寄せを図るわけです。これ、立場変わって準メーンがメーンのときに、今度メーン、ほかの案件でメーンだったところが準メーン以下になりますので、仕返しをするわけですね。ということで、お互い妙な均衡状態にあるわけです。

 このゲームのルールを変えなきゃいけないわけですね。そのゲームのルールを変える一つの刺激剤が産業再生機構だと私は思います。つまり、準メーン以下がメーン寄せをこれ以上図ろうとするのなら、場合によっては機構と相談して、機構の方が乗り出して、先ほど斉藤参考人がおっしゃったように、権利の調整の仲裁役のようなものの機能を果たすということは可能だろうと思いますね。権利調整機能、メーン寄せ防止機能というものをこの産業再生機構は持つべきだと思います。

 もちろん、準メーン以下も、相変わらずメーン寄せを図ってもいいんですが、これはある意味じゃ一か八かのかけに出ているわけです、準メーン以下も。それでもそういうふうに押し込めば、メーンとしては、メーン寄せの負担が余りにも大きい中でやむなく法的整理へ行くかもしれない、あるいはメーンバンク自体の屋台骨が揺るぎそうになっていてこれ以上協力できないという予期せぬ結果になるかもしれない。

 そんなことになってしまえば、一〇〇の債権を一〇〇で回収しようと思っておったのが一〇にしかならないかもしれないわけですね。ところが、既にできている再建策を機構と一緒に協力して進めようということであれば、機構の方は取りあえずそれを、出口の方の投資家とか同業他社としてその会社を買収したがっているところとか、そういう人の声も聞きながら、例えば三〇というふうに査定できたんであれば三〇ぐらいで買うわけですね。

 つまり、一〇〇か一〇しかない五分五分のかけをやるのか、三〇という安全な手段を取るのかということを準メーン以下に突き付けていけば、経済合理性からいったら普通は確実な道を取るはずなんですね。そういうふうに追い込みながら、今度返す刀でメーンバンクにきちっとこの三〇で計画を実行しろということをまた迫っていく。そういう非常にメーン寄せ防止、権利調整という機能をこれこそ国が果たさないとなかなか民間だけでは動かない機能だろうと思います。

○小林温君

 大変よく分かりました。

 それで、今のお話でもありました、いろんな利害関係が錯綜している中で、これは調整がいろんな意味で必要なんだろうと思います。

 それで、先ほど私、斉藤参考人のある意味では御決意をお聞きして、今回審議の中でも例えば再生にかかわる人材の問題ということが何度か議論されております。

 それで、まず大事なのは、志を持った方にこういう機能の中枢にたくさん入っていただくということが大事だということを先ほど私は斉藤参考人のお話を聞きながら強く思った次第でございます。

 この国難の時代に、国の正に競争力の源泉である産業あるいは企業をどういうふうにしていくかという心構えを持っていた方、いる方が正にそれに適した人材だというふうに思うわけですが、その一方、例えば今までのスキームでは、企業再生の法的な処理あるいはバランスシートの右側の修復をどうするかという金融的な処理が例えば中心に行われてきて、その分野の知識や能力を持った方々がチームを組まれて例えば法的、私的、それぞれの整理に当たられてきたんだと思うんですが、先ほど来お話をお聞きしていますと、やはり産業再生というのは、正に処理ではなくて、企業の抜本的な改革であるとか、ビジネスプランあるいはビジネスモデルの転換であるとか、それから産業全体の構造改革ももう視野に入れてやっていかなければならないんだろうというふうに思うわけですね。

 先ほど斉藤参考人の方からもそういう若い方が、その部分を担える方が育ってきているというお話もいただいたわけですが、実際そういう能力を持った方というのは、多分非常に良い条件で高額の報酬とともに実際引っ張りだこになっているというのが現実だろうと思います。私もアメリカでウォールストリートベースの法律事務所に二年ほどおりまして、企業再生のチームと仕事をしたこともありますが、かなりの高額のフィーをもらっているわけですね。

 ですから、一つには、本当に今新しい機構の中でこういう企業再生を担っていける人材がどの程度いるのか、一つは、現在の時点で。例えば、これはこれからそういう部分に慣れた外資のファンドとか外資のファイナンシャルアドバイザーともやり合わなきゃならないんだろうと思うんです。ですから、そういう能力を持った方が我がサイドにいるのかと。それから、そういう方々の経済的な動機を満足させることが果たして可能なのかということをお聞きしたい。これはまた田作参考人と斉藤参考人。

 それと、斉藤参考人にもう一つお聞きしたいのは、その人材の育成、この分野の人材の育成を産業再生機構は担うということを先ほど御決意をいただきましたが、ただこれは産業再生機構、五年ぐらいでこういう企業再生のめどを付けていかなければならない、そういう目前にある企業再生への対処という問題とその人材の育成、これ時間的な軸で考えたときにどういうふうにお考えかということについて御意見をいただければと思います。

○参考人(斉藤惇君)

 一緒の答えになるかもしれませんが、正しく御指摘のとおりかなり有能な人材がこの機関には必要だと思います。

 いろんな機会でこのようなお話を若い人たちとする機会もございましてお話ししていますと、私自身も非常に感激している面があるんですが、先生今おっしゃいますように、彼らが今本当にすごい収入を得て働いているにもかかわらず、国難なんだと、若者立ち上がれと言うと、分かりました、やりましょうというのがかなりいる。本当に今の若者しっかりしているという、感激してしまっております。

 十分な数には至っておりませんけれども、かなり名前が、こういう世界は非常に小さい世界なものですから名前がもう売れている方が多いんですが、そういう方が入ってこようとおっしゃっているのをまた見て、それより随分ジュニアな人が、あの人が行くんだから私も入れないですかなんという声があっちこっちから出始めておりまして、まだまだそれは始まりでございますし、小さい流れでございますが、かなり集人力はあるんではないかと思っております。

 正しく先生御指摘のとおり、これは五年で一応終わるような会社でございますが、そこに百人なり何人かプロの人が集まり、いろいろ刺激し合い、そしてまたお客さんもたくさん知ることができるということは、彼らにとっては、まだ若いですから非常に大きな財産にもなるということですね、次のステップに向かって。そういうことも、チャンスを与えてあげなきゃいけませんし、ある程度社会的インセンティブのある報酬制度を、政府機関ではありますが、使わせていただかざるを得ないかなと、こういうふうに思っております。

○参考人(田作朋雄君)

 斉藤参考人の御説明で十分かと思いますが、一点だけ付け加えさせていただければ、この機構自体で何百人、何千人、そういう優秀な人間を集め切る必要はないと思うんですね。今御指摘あったように、ある程度の人数がいれば、その人たちが更に外部の人間を使いこなしてあたかもオーケストラの指揮者のように全体を統率していくということであれば、かなりのところは機能するんじゃないかと思っております。

○小林温君

 ありがとうございました。