[第156回 参議院 国際問題に関する調査会 2003年2月26日]
○小林温君
自民党の小林でございます。
今日は、お二人の参考人、大変貴重な御意見を伺いまして、誠にありがとうございました。
一つずつ両参考人に質問させていただきたいんですが、まず畠山参考人でございます。
お話の中で何度か台湾の重要性について御言及をいただいているわけでございます。と同時に、そのハードルとしての対中国ということを考えた中で、台湾問題というものもここで触れていただいているわけでございますが、その一つの処方せんとしてガット三十五条の協定の不適用というようなことも御提示をいただいているわけでございますが、これを日本から見た場合に、例えば我々、台湾に行ったり台湾の方とお会いすると、非常にいろんな意味でラブコールをいただくと、熱烈な。つまり、向こう側にニーズがある限り、日本にとっては、非常に交渉相手としても、その後これから通商関係を発展させていく上でも大変重要なパートナーであるし、最適なパートナーだと思うわけですが。
逆に、これを中国に行って、私、昨年、中国に行ったときに、FTAを考えるときに台湾どうですかということをさる偉い方に御質問させていただいたら、無視されたり烈火のごとく怒られたりと、こういう状況があって、現実的に台湾と大陸との間の経済関係が進んではいるのは現実としても、国際的な枠組みの中で台湾を認めるということは、中国にとってはこれは許せない部分もあるわけでございまして、そういう状況がある中で、これちょっと重複されるのかもしれませんが、日本のFTA戦略の中で台湾に対してどうアプローチすべきかということについて御意見をいただければというふうに思います。
それから、深川参考人にお願いします。
日韓のEPAが非常に今後のFTAを考える上で大変重要なモデルになり得るという意見に私も賛成でございます。
私もしょっちゅう韓国に行かせていただいているわけですが、例えば国際的な中で日本と今、韓国の置かれている状況とか、様々なレベルでの交流が進んでいるとか、あるいは構造問題、共有していると、さらには例えば国境を越えた構造調整も実は日韓ではかなり可能性があるんだろうと思うわけです。ただ、一番格好悪いのは、プロポーズをして振られるというのが非常にやっぱり、例えば畠山参考人の場合はすべて並列的に各国にアプローチした方がいいということですが、仮に、限られたリソースでということを考えると、私は日韓のFTAなりEPAを先行させるというのは非常に妥当なアプローチだと思うんですが。
これは深川参考人もお触れになっているように、日本側の韓国に対する思いと、韓国側の日本に対する思いがやっぱり若干食い違っているところがあると。その一つには、まずこの韓国から見た場合の日中と韓中のFTAに対する考え方が今どういう現状にあるのかということについてお聞かせをいただきたいのと、それからもう一つは、例えば韓国の中で、官とかあるいは政治とか産業界とそれぞれのセクター別にこの日本との協定についてどういう温度差があるのかということについて少しお聞かせいただきたい。
それと、ちょっと御意見いただきたいのは、例えば技術標準の話についても触れられておりますが、先ほどADSLで韓国に負けたのが日本のブロードバンド化を進めたという話があると思うんですが、かなりやっぱり韓国は今ITの分野については自信を持っておりまして、この辺の部分が例えば対中の、市場としての中国を取るのか、これからの成長市場としての中国を取るのか、それとも成熟市場としての日本を取るのかということにもつながってくると思うんですが、この部分での日本と韓国の間の熾烈な競争というのが、この日韓の協定を結ぶに当たってのアプローチの中でどういう影響を与えるかということについてお聞かせをいただければというふうに思います。
○参考人(畠山襄君)
台湾に対して日本がどういうアプローチを取るべきかというお尋ねでございまして、台湾は先ほどの農産物供給国の順番では出ておりませんけれども、八八・九%が工業製品を日本に供給しておりまして、台湾から日本への輸出のうちの七%ぐらいしか農産物ではございません。そこで、そういう意味からも非常に自由貿易協定の相手経済として非常に適当なところであろうとまず思います。
それで、現実にどうなっているかと申し上げますと、民間ベースで進めようじゃないかということで、東亜経済人会議というような名前の組織同士で今打合せをやっておられるというふうに理解いたしております。
ただ、WTOに台湾が入りましたときも、現実社会は中国がその加盟に非常に反対をいたしまして、今、小林先生御指摘のとおりでありますけれども、それで中国が入ってから台湾を入れるということで、一日ずらして入れたんですね。そういうのが現実社会であります。したがって、日本が台湾と裸でいきなりバイラテラルで自由貿易協定を結ぼうという動きに出ますと、中国から非常な反発が出てくることが予想されます。
そこで、私の提案は、東アジア自由貿易協定の中に台湾も中国も入れて、そしてあたかもWTOのときに中国が反対できなかったように、中国が最終的には反対できなかったように、東アジア自由貿易協定に両方を入れて、そして二つの間が、もしFTA関係に入りたくないのであれば、さっき申し上げたような一条を設けることに、相互不適用という条項を設けることによってその問題は解決しながらやっていったらどうかというふうに思っております。
私も台湾で陳水扁総統にもお目に掛かりましたし、その他のお偉い方々にもお目に掛かりまして、中国との自由貿易協定はどうかということを伺いましたが、お答えは非常に否定的でございました。それから、中国側でもある相当な幹部に伺いましたが、三通の問題だってまだ解決をしていないと、政治的にも難しいんじゃないのということで否定的でありました。
だから、双方は余り相手の自由貿易協定との関係に入るのを歓迎していないと思いますけれども、そういう状況でございますが、日本は入った方がよろしいと思いますので、WTOで台湾とああいう関係を持てることになりましたと同様に、東アジア自由貿易協定でそういう関係を持てるようにしたらいいんじゃないかというふうに思っております。
○参考人(深川由起子君)
韓国が新しい政権ですので、どういうFTA、特に日本に対してどういう、もうとにかく日本という存在がやっぱりある種特殊な存在ですので、そのセンシティビティーを無視してはもう絶対できませんので、その問題は御指摘のとおりあると思うんですが、もう一つは、やっぱり中国の成長が余りにもまばゆいので、韓国にとっては貿易収支も黒字ですし、韓国は日本よりはるかにうまく中国とやってきているんだという自信を持っているんですね。
なので、また中国も、日韓中ができる前に日韓ができるというのは中国は決してポジティブに受け止めていませんので、またそういうアプローチを韓国に対してはしているというのは、もちろん我々計算に入れなくてはいけないということなんです。
今、中国は、地政学的に見ると、やっぱりロシア、アメリカの関係というのは結構ブッシュになってからやっぱり良くなってしまい、日米の間の紐帯というのは非常に固くて、しかもそれが第三国に共同行動を取るようになってきて、非常に安保的な世界ですけれども。アメリカ・インド軍は海洋演習をやっており、中央アジアに親米政権を作ろうとしており、更にイラクまでと、こうストレッチしていくことを考えると、もう地政学的出口ってASEANに出ていくしかイメージ的に見るとやっぱりない。その中国の圧力というのは結構厳しいものがあると思うんですね。
だから、中国がASEAN・FTAからしばらくして、アメリカがASEAN・アメリカ・FTAというのを出してくる必然性ってやっぱりポリティクス上あるというのがもちろんあって、そうすると、韓国はある種のピボタルカントリーになって、日米側の方に最初に寄ってくるか、中国側の方に最初に寄るアプローチを取るかというのは結構注目されているところだと思います。
ただ、韓国もようやく日本に対しては、日中韓に執着するといつまでたっても日韓もできないというのがだんだん分かってきていて、じゃ日韓と韓中は別々にやりましょう、関税同盟じゃないんだから別々にやればいいんですねという感じに最近はなってきていると思います。ただ、韓国にはまだまだ、対日貿易赤字で我が国は破綻するという、もう宗教のように根付いたイメージは物すごく強いですので、これエコノミストの説得で払拭できるものじゃありません。
その信頼関係のシンボリックなもの、ほとんど余り重要じゃないんですけれども、すごくシンボリックなものとして大事なのはやっぱり人の移動なんですね。ビザのステータスを日本が先進国のように認めてくれるというのは、中国人の実利主義よりプライドの社会なので、すごく重要なんです。例えば、IT技術者が少しでも入ってきていることによって、ああ、うちを認めてくれたんだという気持ちというのは、非常に感情的な方々なので、やっぱりすごくビルディングブロックとしては大事な意味を持ってきていたんですね。
そういう意味では、ある種、日本も韓国をやっぱり中国へのレバレッジに使っていく価値というのはあって、まず日韓ですごいクオリティーの高い、ハイレベルな、だれが見ても透明で、WTO整合的で、しっかりしたものをまず作ってしまって、じゃそのカフェテリアから取れるものだけ取って付いてきてくださいというのである種圧力を掛けることはできると思いますし、中国もそれから学べることもたくさんあると私は、日中韓もやっているんですけれども、あると思っています。
日中韓の会議をすると、日韓の間というのはやっぱりお互い物すごく率直に意見を言うのでしばしばすごい争いにもなりますけれども、それをやっぱり中国は呆然と、割と、そこまではっきり言う世界なのかというのを、やっぱりちょっと公式論で付いてきているところはあって、ちょっとやっぱり違う世界があって、でもやっぱりだんだんそこになじんでいくという意味では、韓国は割と貴重な役割を果たしていると思いますし。
それから、あと韓国ですけれども、チリとやって、いかにFTAというのを制度化するのが大変かというのはもう痛烈に分かったんですね。チリとの交渉はもう五年も掛かって、日シよりもはるかにトラブってできたわけですので。
今、韓国が考えているプライオリティーは、メキシコは取りあえず行かざるを得ない。何しろ日本と競合的ですから、日本の行くところ行くところやっぱり行かざるを得ないので、まずメキシコに行かなきゃいけない。それからその次は、今シンガポールというのが急速に出てきて、結局、韓国の割と原始的な発想というのは、自分だけが日韓でなるのは嫌だと、プレッシャー大きいので。だれか三者をとにかく入れたいと。中国が一番望ましいんだけれども、日本がそんなには積極的じゃないみたいだから、じゃ、もうシンガポールでもいい。この際、自分だけは嫌なので、じゃ日韓シンガポールでグループみたいのを作って、それはかなりの水準の自由化を一気にやって、それをもって日韓アレルギーの人たちを国内で説得しましょうというアプローチが一つ存在しています。
ただ、一方では、そんなシンガポールみたいな国とFTAやっているのは、うちに何かインパクトあるわけという非常に事大主義な方々もいるので、盧武鉉政権はそういうところをどうやっていくかはよく分かりません。
一つ大きなモメンタムに多分確実になるのは、盧武鉉政権のキャッチワードは、北東アジアの中心国家というキーワードなんです。これは、朝鮮半島の平和という理念を持って我々がすべてを開放して、日中の間に立って相互依存を深めて、それで平和を維持していくという、どうも聞くところそういうコンセプトらしいので、そのロジックから来ると、日韓、日中ともにFTAは盧武鉉政権はプラス。
ただ、よく聞いてみたら、非常にナショナリスティックな発想があって、やっぱりサッカーも八位ぐらいでやめておいた方が、八強ぐらいでやめておいた方がいいと。四強まで行ってしまったので妙な自信を持ってしまって、やれば何でもできるというメンタリティーがすごい若い人に多いものですから、盧武鉉政権の支持者の。だから、だれよりも規制緩和をちゃんとやって、だれよりもスピードに早く対応して、それで先進、中心国家になるという御発想のようなので、ちょっとやや疑問は残っていると思います。